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弱小吹奏楽部を追いかけた軌跡 最終話 夢の先へ

 県大会が終わってから1週間後、地元の夏祭りでフルート・クラリネットの二重奏を披露することになりました。
 小学生と、その子供を持つ親御さんをメインにご招待、狙いは吹奏楽部への勧誘です。この地域を音楽の溢れる土地にしたいという壮大な夢もありますが、壮大過ぎて私の手にはおえません。

 年配の方や、吹奏楽部のメンバーなど、多くの方々にご来場いただき、感謝です。
 司会進行は私が務めましたが、なかなか演奏会の司会って難しいですね・・・。

 最後は『花は咲く』を二重奏で演奏してもらい、お開き。
 大きな拍手を頂きました。後片付けをしている最中にも『実際に楽器を触らせてほしい』『練習はいつもどのくらいやっているの?』『私にもできるかな?』
 などなど質問攻めに合う2人。演奏前に嫌がっていたのですが、なぜかとっても楽しそうに2人は応えていました。


 奏者2人を含め、6人の3年生は中学校吹奏楽部の活動を終えました。

 まるで見知らぬ開拓地に放り込まれ、荒地を耕し、土壌改良を重ねながら、作物を育ててきたような3年間です。
 育った作物も最初はいびつで小さなものでしたが、あの手この手で改良を加え、最後は立派に育ちました。
 しかも立派な作物を育てる土壌は出来上がりつつありますので、来年以降はさらにより良いものができる環境が整っています。


 中学生の部活動を親がサポート・追っかけをする。私にはもう二度とできない経験です。
 今後は部活動の地域移行が進み、吹奏楽を取り巻く環境は大きく変化するかもしれません。

 すでに夏のコンクールには〇〇中学校という団体名ではなく、〇〇ウインド、〇〇ブラスバンド、のような団体名でのエントリーを見かけます。
 名前だけの印象ですが、プロ集団を相手にしているような錯覚に陥り、不思議な感覚です。

 全国で有志の皆様が、地域移行の取り組みへチャレンジしているのを承知しています。
 様々な形態があり、しかも正解がコレ!と決まっていない分野のお仕事です。
 地域の実情に合わせてオリジナルの運営を行うわけですし、先行モデルは参考程度にしかなりません。
 関係者の方々に対して心から尊敬します。


そして一年後

 

 娘は高校生になりました。地域の強豪校へ入学し、吹奏楽を続けています。個人レッスンを継続し、他のバンドも掛け持ちで活動。多忙な日々を送っています。

 そんな中、信じられないような嬉しい出来事がありました。

 後輩たち中学校吹奏楽部が県大会で金賞・代表となり、支部大会へ出場することになったのです❗️

 一年前、厳しい指導を受けた2年生は泣きながら練習に励みました。一度崩壊しかけたマインドはその後立て直し、良い集団に育っていました。
 保護者たちの動きも変わり、より良いサポート体制ができあがっていました。

 娘の学年の保護者有志でお餞別を集め、それを代表して届けに行った時のことです。

 その日は支部大会に向けて練習をしていました。私を見つけた保護者の皆さんが、『ぜひ練習を見学してください!』と音楽室の中に案内してくれました。

 そこには子供たちの笑顔があり、初めましての新一年生が並び、先生がいつもと変わらず大きな声で指導をされていました。

 コンクール曲の練習が始まりました。昨年と違い、全てのパートが良くなり、一年生もしっかりと音を鳴らしています。

 目指していたものがそこにありました。

 心地良いサウンドが流れます。

 私の弱小吹奏楽部を追いかけた軌跡は、ここで終わりました。

 全ての関係者の皆様に心から感謝します

 あのサウンドは永遠に私の心の中に生き続けます

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