2023 10.3 サイドストーリーオブクソババア

10月。この町では3と8のつく日に開催される朝市、三八市がある。今日は3日で、今年の三八市初日。汽水空港はガパオライス弁当を出すことになっている。飲食担当のアキナは早起きしてガパオの準備に取り掛かった。
みちくんは7時前に起床。起きてすぐ「あーちゃんよ。あーちゃんよ。」と不安げな顔。「母ちゃんもう行っちゃったよ。」と答えたが、答え方がまずかった。その言葉をきっかけに30分以上絶望の雄叫びと涙が止まらなくなってしまった。「母ちゃんはちょっと仕事に行ったんだよ。終わったらすぐ会えるよ。」と言えばよかった~と思いながら集落をぐるぐる散歩したりしてどうにかカームダウンさせようとするが絶望の波はなかなかひいてくれない。結局、かなさんがつくったパンケーキを一口食べたらピタっと泣き止み、以降はねりちゃん&ひふみちゃんとキャッキャと遊んでいた。魔法のパンケーキだ。

みちくんをこども園に送り、店でアキナと合流。アキナは仕出しやさんの如く大量のガパオライス弁当を机に並べ、次々と具材をつめこんでいた。さすが。僕はあんポン&カレーぽんのPOPをつくったり、バジルの葉をちぎったり、机を運んだりとチョロチョロする。
弁当とポンを並び終え、路上での店番開始。初っ端、通りがかったおばあちゃんに「ガパオライス弁当どうですか~」と言うと、おばあちゃんは「わけわからん」とジットリした目で言い捨てて立ち去る。去りながら「わけわからんもん売ってほんじゃらうんじゃら」と呪詛の言葉を呟いておった。おお、これがストリートの洗礼。この感じだ。開店当初の記憶がフラッシュバックする。こういう応答を連日浴びながら店をスタートしてたなと思い出すと同時に、今では色んな「わけわからん店(良い意味で)」が汽水空港以外にも周辺に出来たおかげで、基本的にわけを分かろうとしてくれる人と接することがほとんどになったなと感慨深いものがあった。汽水空港はよく続けてこれたものだとも思う。いやあ、ずっと苦しかったなと数々のボディーブローのような言葉を思い出していた。あ、ちょっと苦しい。と思ったところでアキナはそれを察して「店番私がするから店行ってていいよ」と助け舟を出してくれた。優しい人よ、ありがとう。

今日はいつも元気で福祉の仕事をするOさん、最近介護の仕事を始めたKさんが来て、福祉や人間の話しが弾んでいた。「今日ガパオライス売ってたらクソババアにディスられた」と言ったら、Oさんは「福祉介護の仕事してたらクソババアをクソババアと思わなくなると思うよ。クソババアのサイドストーリーが始まるんだよ。」と教えてくれた。サイドストーリーオブクソババアか。確かにその人の別の面も見れたりするとだいぶ違うだろうな。人間と人間という関係で接することができれば。店をしていると「客」と「店」という固定化された面と面しか応対しないことが時々あり、その時にしんどくなる場合が多い。
Oさんの職場では週に一度の出勤スタイルも許容されているらしい。もう少し落ち着いたら僕も働いてみたい。

今日もねりちゃん&ひふみちゃんは町をぶんぶんと駆け回っていた。足湯で温泉卵をつくれると知ったぶんぶんズはさっそく卵を購入し、1パック全部温泉卵にしていた。そしてそれを3つずつ割って、デロデロの温泉玉子を美味しい美味しいと食べていた。

夕方、図書館へ注文してもらった本の配達へ行く。ついでにねっこかなこさん関連の本と、鳥取在住の詩人、漆原正雄さんが最近立ち上げたジョバンニ書房の本『ボトルメール』も持っていく。両方ともとても良い本だ。漆原正雄さんは僕の中で三大詩人の一人。甲本ヒロト、谷川俊太郎、漆原正雄。心を撃ち抜く詩を書く人々。

閉店前、アキナが「そうだ、今日むっちゃ嬉しいことあってさ。いつもビニール袋いっぱい持って歩いてるおばちゃんいるじゃん。あのおばちゃんがガパオライス弁当買ってくれたんだよ。笑顔で。」と報告してくれた。いつも挨拶しても険しい顔で通り過ぎていくおばちゃんだ。どうやら耳が聞こえなかったからなのだと分かった。人は色んな面がある。町にも店にも色んな面がある。そういえば、今日はSNS上でしか繋がっていなかった近所の梨農家さんとも交流が芽生えた。それもとても嬉しかった。1日の中にも色々な面がある。それをいつも忘れないでいよう。

さて、今日も書いた!おやすみ!!

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