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実話のほうのネトフリ/インド/スケボー映画『スケーターガール』(2021)

インド映画『スケーターガール』(2021)には、ベースとなる実話が存在する。って話は、ちょっと英語で検索すりゃ目に入るんですよ。ただ、報道資料的なものをコピペして一丁上がり。という映画サイトがあまりに多いせいで、日本語でその辺の経緯を伝えるサイトが無さすぎるだろ。という思いから先週書いたnoteがこれ。

一週間たちましたが、相変わらずこの映画の感想は
・自分の夢を追う主人公ステキ
・話の掘り下げ方が浅いんじゃね?
・撮影用にスケートボードパークを作ったとか凄い
に集約されてしまう現状なので、続編を置いておきます。題して
実話の『スケートガール』はこういうお話

■主人公はふたり
ウルリケというドイツ女性-彼女がスケートボードパークを建設
アシャというインド女性-アウトカースト*の女の子、スケボーを通じ自分の道を見出していく

*カースト制度のさらに外側のひとたち。もちろん苛烈な差別を受けています

■物語の舞台
インド中央、マハデラプラデシュ州のジャンワールという小さな村。
もともと暮らしていた一帯が国立公園に指定されたせいで、何も無い場所に村ごと強制的に移らされた。一応は「農業従事者」ということになっているものの、砂漠化が進むなかとっても貧乏。どのぐらい貧乏かというと平均の年収が45,000円。
世帯数240、人口1,200人、男女比50:50(2016年当時)。

■ウルリケがジャンワールに来た理由
ハイデルベルク生まれ、現住所なし、デジタル・ノマドにしてソーシャル・アクティビスト。
マーケティング、人事畑の仕事を経てフリーランスのコミュニティ設計コンサルタントとして活動。
2012年、ビジネスカンファレンス出席のため初インド。
いろいろな場所を見てまわるうち、ジャンワールに活動拠点を置くことを決意。彼女の頭にあったのはSkateistanというNPO*だった。

*アフガニスタンでスケートボードを通じた教育を進め、世界的に高評価を得たのは2014年

■スケートボードパーク、Janwaar Castle
アーティストにスケートボードパーク建設企画を説明、コンセプトに共感するひとたちにボードに絵を描いてもらい、それをオークション・サイトで競売にかける形のクラウドファンディングを開始、180万円の調達に成功。
パーク建設の助っ人としては、ドイツから建築家たちが渡印。
2015年にパーク完成。

■スケーターガール、アシャ
「むかしは男の子が怖かった。早くから酒を飲む、噛みタバコをする、賭け事をする、そんな村だったから」
2015年、スケートボードパークに日参するようになって彼女の人生は変わる。ウルリケの目にとまったアシャは、村ではじめてパスポートを取得し、英国に短期留学することになる。
「その当時も、私が朝パークに行ったら壁に『スケートボードをやめろ、さもなくばおまえを焼き殺す』って書いてあったり」
2018年、パークスケートボード世界選手権・南京大会にインド代表として出場した際、インド国内メディアが一斉に彼女をとりあげ、TVのCMで彼女が滑る姿が流れるに至って、ようやく逆風は小さくなる。

■アシャの夢
スケートボーダーとしてインド国内を転戦し、海外にも何度か出た彼女に、さすがに親ももう「いつになったら結婚するんだ」とは言わなくなった。彼女の結婚を強行に主張していた兄ですら、妹の活躍を喜んでいる。
アシャ自身はウルリケの活動にヒントを得てBarefoot Skateboarders Organisation(はだしのスケーターたち)というNGOを組成、子どもたちの教育に将来を見出している。

以上、いかがだったでしょうか()。
ネットフリックス映画が「オリジナルストーリー」に固執するあまりに、不自然な描写が多数あることは見た人なら分かると思うのですが-突然スケートボードパーク作り出したり、エンディング後はどうなるんだ、だったり-
つまりね、実話に寄せすぎるとパクリだって言われるから、創作しているわけです。
そして残念なことに、その「実話じゃないパート」が作品の完成度をむしろ下げている。実話にインスパイアされたフィクションです、って正々堂々と言えば、その辺の匙加減はどうとでもなるのにね。

screenshot from Asha "real skater girl" Gond song on SOUNDCLOUD

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