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同じアホなら。って姿勢/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(24.3.17-24.3.23)

クーリエというフランス定期刊行紙の日本版、という位置づけのネット媒体があります。他媒体の記事を寄せ集めてくるプレゼンテーションのスタイルは珍しくもないですが、元記事の主意と異なる見せ方を恣意的におこなうケースが散見され、個人的には「こいつは怪しい」箱におさめています。
好例が今週ニューヨーク・タイムズから転載された下記の見出し。

カッコ付き「愛国心」を刺激することでPV稼ごうぜ。という底意が見え透いて下品。としか私は思いませんでしたが、案の定「じゃあ執筆者がヨシとするUSの現状は」とか「そもそも執筆者」とかいう反応が多いわけです。
なお元記事のタイトル

悪い知らせでも知らせがないことに比べればまだしも良い知らせといえる、ぐらいの奥ゆかしさというか、夢を見て裏切られるのはもうイヤだ的な庶民の防衛本能由来のニッポンの現状。を示しています。
つまりね、クーリエ・ジャポンが吹く笛の音にあんまり正直に踊るの、やめたほうがいいっすよ。という話、これからも目につくたびに言っておこう、と思いました。
ちなみにもう一本

これの元記事はガーディアン。

フランスにおける人種差別(とミソジニー)が根深い、という話でまあまあ翻訳もまっとうだったので、ぜんぶがぜんぶ変。ってわけでもないところが先週言及した産経新聞を彷彿させる。

■その産経新聞といえば今週も快調で

同じ話を逆から報道する東京新聞いわく

朝日新聞

旗色悪いのは産経ですが、お膝元の埼玉新聞の腰の座らなさに私はまあまあ呆れていて。

威勢の良い声につられる記事を挙げがちなんです。その彼らが今回、アンチクルド側ではなくアンチ・アンチクルド側っぽい記事を出しているってことはそっちが優勢なんだな。って風見鶏としては優秀なんだけど、そんな仕事は脊髄反射するSNSユーザーに任せて地元紙にしか出来ない仕事をしてくれや。

■今週のその他ニュース。に行く前に

2月末のニュースが静かに「なかったこと」化していくのはこの数年、同様のニュースを見てきた者としてはまあまあポジティブに受け止めたいと思っています。

ただね、現在進行形で罪に問われている女性もいますのでね。

■今週のその他ニュース

各紙がペイウォールの向こうに置いているのでせっかくイイコト書いてあるのに読まれない。

技能実習制度の健全化を図る中核的な機関とされてきた監理団体は、実際には受け入れ企業などの利害を優先し、技能実習生保護という重要な役割をしばしば放棄している。新たな制度では「監理支援機関」と名称が変わり、国による許可の要件が若干厳格化されるが、改善は期待薄である。
受け入れ企業などや監理団体を実地検査し、技能実習生からの相談に乗ってきた外国人技能実習機構は「外国人育成就労機構」に衣替えし、特定技能の労働者の相談にも応じることとなる。とはいえ、これまでの実地検査は甘く、相談対応も役所的で技能実習生の救済に結びつかない例が多く、信頼性は高くない
以上のように、登場人物が基本的に変わらない育成就労が、人権侵害をはじめとする問題を克服できるとは考えづらい

太字は引用者

最後の記事、最低賃金が月額40万円、入国に必要な英語レベルがIELTS4.0(≒英検準2級、TOEIC470)。
日本に特定技能で来るのに必要な語学力が額面上はCEFRでいうA2なので、同じぐらいの言語能力を求められるわけですね。額面上、と書いたのはわりと対策が容易なので日本語のほうが実態としては簡単だから。
でも日本の賃金相場は20万円ですからね、もらえる金額が倍ちがえばオーストラリアのほうが魅力的でしょうねえ。

そらこうなるわな。

■隣国動向に注目するのは当欄が得意とするところですが、今週目に入ってきたコラムもなかなか興味深かったので紹介しておきます。

状況が状況だけに、最近は政治傾向を問わず移住民に対する規制を緩和すべきだとの声があがっている。違いを認め、共存を模索しようとの声も高まっている。
同意しつつも、依然として疑問は残る。国、民族、人種のような皮を剥けば、その中には搾取を通じてのみ維持が可能な体制の問題が存在するのではないかと感じるからだ。内国人と外国人を分ける前に「人間が敬遠する労働」であるなら、まず労働現場を変えるべきだと考えるからだ。
未来の韓国を想像してみよう。アジア各国からやって来た人々が低賃金雇用を埋めたその地で、移住民の第2世代が自身の親の受けてきた搾取を批判して立ち上がったとしたら? 低賃金労働を強制し、職場を離脱すれば違法のレッテルを貼って処罰する韓国の移住民政策を「現代版奴隷制」だとして批判したとしたら?
私たちはそれを移住民の問題と考えるべきか、それとも階級問題と考えるべきか。単なる移住民に対する歓待が、世代を重ねて積もっていくその怒りを防げるだろうか。

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