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37 どこまでも自分本位な夫

遊園地をあとにして、わたしは夫に伝えた。

「いまから探偵に解約の電話をする」

子どもたちの前で話すことか、と言いだけな怪訝な顔をし、子どもたちをかばうような仕草をした夫。いかにも私が悪いことをしているとでも言うように、尻拭いは自分でしろとでも言うように…。

夫の前で探偵に電話をかけた。

「すみません、夫と話しましたら相手は地方に住む女性でした。はい、なので契約は解除したいのですができますか?」

電話の向こうでは、探偵リーダーが解約の際の手順、契約金の一部返金について通常の案内をしてくれた。

さすがの夫もまさかこれが嘘のやりとりとは思わないだろう。その証拠に自分が調査の対象から外れたと知り、その日以降は毎日いきいきと振る舞っていた。

対して暗く不機嫌なわたし。そんなわたしに夫が言った。

「なんでそんなに毎日、塩対応なんだ!」

わたしは実際に不機嫌で暗くしていい状況に少し気持ちが楽になっていた。夫の不倫を知った妻として言った。「自分の夫が地方の女と不倫していると知ってニコニコしていられない」

地方の不倫相手naomiとの一件で神経をすり減らしている妻を演じつつ、本当にすり減った毎日だった。

その後も同じことが繰り返された。不倫がバレて謝罪し、すべて無かったことにして明るく前に進む夫。かたや絶望のどん底にいる妻。そんな妻にイラつく夫。

「夫の不倫が発覚して、そのあと笑顔で過ごせるわけないでしょ!!自分がやったこと分かってるの?普通なら土下座して謝って、女ときちんと清算する経緯など伝えて、誠意を見せるでしょ!」

非表示にすればなんでも隠せると思っている夫は、ようやく今自分がすべきことに気づいたようだった。

突如、土下座して謝った。

都内の女との関係を隠したいが故のパーフォーマンス。誠意がひとつもない形ばかりの土下座にわたしの顔は嫌悪感で歪んだ。

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