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星雲や星団を自分で導入するために。その3

星雲星団などの目的の天体を望遠鏡などの視野に導入するのに天体位置を表示してくれるスマートフォン星空アプリを活用すると比較的楽ですよ?って話を展開しています。
もちろん、ファインダーで探して視野へ導入出来れば導入スピードは速くなります。しかし、そういう天体の数は少なく、ファインダーの視野内に捉えている時でも実視ではうっすらとしか見えていなくてメインの筒の視野へ導入するのは難しいものです。

そこで、スマートフォンの星空アプリを使っての天体導入となる訳ですが、まず活用するのは目的天体の位置DATAです。赤道儀であれば赤経・赤緯の位置DATAを使います。天体の位置DATAは星図などに記載されていて、赤道儀に付帯されている「目盛環」を使って導入する方法です。目的天体の近くにある目立つ星を導入し、目盛環の目盛をその星に合わせ、そこから目的天体の赤経・赤緯へ目盛を見ながら粗動して天体導入を行う方法です。最近の赤道儀には目盛環が付帯されていない物も多くなりましたが、赤道儀という架台ならではの導入方法ではあります。

今回の話は赤道儀架台ではなく、経緯台架台とスマートフォン星空アプリを使っての導入方法として、「方位・高度」の位置DATAを使う方法ですが、前回の記事「星雲や星団を自分で導入するために。その2」https://note.com/kiss_a_ten/n/n1f705e28102e  においてザックリと紹介していますので、方法は割愛いたします。

この「方位・高度DATA」を使って経緯台で天体導入をする方法のキモは3つです。

1.経緯台架台の水平可動部分と垂直可動部分に目盛を付帯する。
(水平方向は360°、垂直方向は90°)
2.経緯台架台を可能な限り精度よく水平に合わせる。
(水準器を付帯する。)
3.方位目盛と実際の星空を一致させる。
(北極星などを使って方位をアジャストする)。
です。

つまり、星空アプリが表示する方位・高度DATAに基づいて、望遠鏡を可能な限り正確に「方位・高度」の方角へ向けることで、その向けられた位置には天体がある、という訳です。この考え方は昔からある方法ですが、天体の方位・高度位置は日周運動によって常に移動していますので、観測地におけるリアルタイムでの表示が難しかったのですが、現在のスマートフォン星空アプリは観測地と時刻によって極めて精確に方位高度のDATAが表示されるようになっています。

先程の「3つのキモ」の意図は経緯台架台のセッティングの重要性なのです。例えば架台の水平が3°傾いていれば、表示されたDATAどおりに目盛を使って望遠鏡を向けたとしても視野中心から3°ズレているという事なのです。目盛りの読み込み精度と架台のセッティングが上手くいけばいくほどその誤差は少なくなり、ファインダーの視野どころか、低倍率の望遠鏡視野に直接導入されている事も少なくはありません。

実際にこの方法を使ってみて、かなりの確率で望遠鏡の実視野(25倍、実視野2.4°)のどこかに天体が導入されていることがほとんどでした。私が使用しているファインダーの実視野は7°の物です。逆に言えば、導入誤差(目盛りの読み取り誤差・架台のセッティング誤差)はプラスマイナス3.5°くらいまで許されると思えば、ぎちぎちに考えるよりも「ファインダーの視野の近くに天体がある」と思って導入作業を行うのが気持ち楽なのかもしれません。実際に天体の近くにファインダーが向いていれば星空アプリを使ってファインダーの視野に見えている星空とアプリが表示する星空を比較して、導入のズレを修正していけば良いのです。

経緯台架台を手動で動かすとモータでの導入よりも動きが早い場合が多く、この方法になれると天体が見えている視野の近くで少し微調整をするだけの作業になっていきます。

経緯台に目盛りを付けたり、水準器を付けたりと若干のめんどくささはありますが、一度付けてしまえばあとは使っていくだけです。(笑)
純粋な手動導入と違い、いわゆる「デジタル星図+手動導入」のハイブリッドな導入方法となりますが、ポルタなどの経緯台やドブソニアン式反射望遠鏡には極めて有効な方法として、すでにベテランの天体導入猛者の諸先輩方もやっている方法らしいです。

自分で導入して見えた天体って、ちょっと嬉しくて、他の人にも「○○星団が導入ったよー!見て見て?」とお誘いしたくなってしまいます。みんなで見る、これもまた楽しいひと時でございます。


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