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素直は従順。純粋無垢とは無知ということ。ヴァイオレットエヴァーガーデン
少佐の瞳は「美しい」です。
“美しい”という言葉を知らずに、この少女はどうやって生きてきたのだろう。この美しい少女はなぜ“愛してる”の意味を探すのか。
儚くて、尊い。この作品も、ヴァイオレットも。
ヴァイオレットエヴァーガーデンは、兵器として育てられ、人の気持ちが理解できない少女が自動手記人形(手紙を代筆する人)となり、「愛してる」という言葉の意味を理解するまでの心の成長を描いた物語。
あの有名な京都アニメーションで制作され、京都アニメーション大賞を受賞した、傑作と称されるアニメだ。
是非、心の綺麗な、そして外からの刺激に敏感な思春期の若者に見てほしい。できれば私も青春時代に出逢いたかった。あの頃にこの作品に出会えていたらー。
※注意※
私はこのアニメをかなり穿った見方で見ています。
この作品の大ファンだという人は気分を害する可能性があるので、ここでブラウザをそっ閉じすることをお勧めします。
本当に知らないのか?
私は炎を美しいと思う。
当事者の方々の気持ちを思えば大変失礼なことを言っているのは承知しているが、あの首里城の火災の映像を見た時も、悲壮感よりも先に美しいと思ってしまった。炎には人を魅了する力がある。暖炉の炎やキャンプファイヤーをずっと見ていられると思うのも炎の魅力ゆえだろう。
ヴァイオレットは14歳という設定だ。
そして彼女は“美しい”という言葉を知らない。
生まれて14年間一度も美しいものを見たことがないのか。
美しいという感情を持ったことなはいのか。
各地の戦場で広大な自然を目にしていながら、か。
巨大な建造物が赤々と燃え上がる瞬間も目撃していても、か。
その答えは否だろう。
ヴァイオレットは言っている。
「言葉がわからなかったので言ったことはありませんが、少佐の瞳は出会った時から”美しい”です。」
つまり“美しい”と思う感情はあったということだ。
その気持ちを表現する言葉を知らなかっただけ、というのだ。
聞く、話す、書く、読むができるとは
ヴァイオレットは人間だ。
いくら兵器として育てられたとはいえ、食事は与えられただろうししっかりとした服も着ている。銃やナイフといった道具も使える。オオカミに育てられ、野生の獣として生活していたわけではない。「少佐、ご命令を」と言える。その命令を理解して遂行することができる。報告書が書ける。読める。“書ける”ということは話し言葉と書き言葉の違いを理解しているということだ。自身で手紙を綴ることが難しく、自動手記人形という代筆サービスに需要があった作品の背景を加味しなくとも、ヴァイオレットの語学力は平均値よりも高かったと考えるのが自然だろう。また語学力が高いだけではない。作品の全てを通して彼女の賢さが伝わってくる。彼女は馬鹿ではないし、子供でもない。
言葉を理解し、操る彼女が周囲の人間の話の内容を理解できないなどあり得るのか。戦場で仲間と共に戦っているシーンがあるということは、他の人間との一切の接触を禁止されていたわけでもないだろう。それなのに“美しい”という言葉を知らなかった?“愛してる”の意味がわからない?
共に戦った仲間が目の前で死んでいくのを見ても本当に何も思わなかったのか。“淋しい”という感情を抱いたのは少佐に対してだけなのか。14歳という多感な時期に男だらけの戦場に派遣されて、何もなかったのか。それが命令ならばどうするのか。そしてそのときどんな感情を抱くのかー。
本当にヴァイオレットは美しいという感情もその言葉も、愛してるという感情もその言葉も知らなかったのか。
そんなことを考えながらこの作品を見てみると、最初に見たときとはまた違う感想を持つかもしれない。
女は男が思っているよりずっと強かだ。そして狡い。
子供は大人が思うよりもずっと多くを考える。そして学ぶ。
おわり
ーおまけー
あの頃この作品に出会えていたら私はもっと早く大人になっていたかもしれない。カメハメハや庶民シュートを練習する無邪気な子供時代を過ごせたことを幸せに思う。
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