4年生「ぼくはMVP」の指導案はこうする!
こんにちは。
今日は『言いたいことを言えない、こんな世の中は・・・ダメ?』
このテーマで教材解説をします。
「正直に言いましょう」
「誠実な人」
などと、
正直や誠実については、学校生活で考える場面が多いです。
ということは、子どもたちにとっても身近な内容項目です。
正直に言うこと、誠実に生きることの大切さは知っていますが、
実際に正直さが求められる場面では、
自分の利益やプライド、怒られないという恐怖や不利益の回避など、
様々なことが、正直さを邪魔します。
宿題をやっていないけど、「やったけど忘れました」と言う。
自分だけ怒られたくないから、「ぼくだけじゃないです。」と言う。
意見はあるけど、発表で間違えて笑われたくないから、前の人が言ったことを繰り返す。
などなど、正直さを阻害する要素は、
数え切れないほどあります。
「正直、誠実」を扱う授業では、
その大切さを45分かけて伝えても、
のれんに腕押しです。
知っているのですから。
そうではなく、正直な心とは何か、
誠実とはどんな心から生まれるのか、
という本質を考えて、
核心に気付いた時、
「やってみたい!」と
子どもの心の内側から意欲がわいてきます。
(これを道徳的実践力と言います。)
この姿が、授業の終末では見られるといいですね。
では、解説です!
1 教材について
2 内容項目と教材
3 発問
4 まとめ
順番に解説します。
1 教材について
4年生「ぼくはMVP」(光文書院)
A 主として自分自身に関すること
「正直、誠実」
3・4年の目標・・・・過ちは素直に改め、正直に明るい心で生活すること
「ぼくはMVP」あらすじ
「ぼく」はクラスのみんなとドッジボールをしている。
ひざにボールがかすったが、誰も気付いていない。
雰囲気に押され、そのまま当たっていないということでゲームは進み、
「ぼく」は最後の1人にボールを当てた。
「ぼく」のチームは勝利。
「今日のMVPはこうちゃんだね」とみんなが「ぼく」にかけよってくる。
「ぼく」は本当のことが言えず、気が重くなっていった。
2 内容項目と教材
・まずは、正直、誠実のそれぞれの意味について考えましょう。
それぞれ広辞苑で調べると、
正直・・・心が正しく素直なこと
誠実・・・真面目で真心がこもっていること
とありました。
・うーん、言葉の意味はこのようになっていますが、
この言葉をどのように授業で使えばいいのでしょうか。
結論を言います。順番が大切なのです。
・正直は、行動が先で言葉が後。
誠実は、言葉が先、行動が後なのです。
・正直とは何でしょうか。
「正直に言いましょう。」等と使いますね。
これは、自分の行った行動を、嘘偽りなく言葉で表現しましょう、という意味です。
行動→言葉ですね。
・もっと具体的に例をあげましょう。
Aくんが花瓶を割ってしまい、先生に見つかりました。
先生は「何があったか正直に言ってごらん。」と言います。
するとAくんは
「遊んでいて、手が当たって花瓶を割ってしまいました。ごめんなさい。」と言いました。
これは、「花瓶を割ってしまった」(行動)Aくんは、自分の行いを謝る(言葉)という流れです。
このように、行動→言葉の流れのことを、「正直」と呼ぶのです。
・対して「誠実」はどうでしょうか。
正直と似ていますが、「正直に言いましょう。」のように「誠実に言いましょう。」とは言いませんよね。
これは、先に言葉があるからなのです。
・例えば、約束を守る人。
この人は誠実と呼べるでしょう。
これは、「約束をする」(言葉)行為の後に、
「守る」(行動)があるという流れです。
発した言葉やルールに基づいて行動をすることを、誠実と呼ぶのです。
・ここで、話を戻すと、Aの内容項目には「正直、誠実」とあります。
これは、順番が大切です。「誠実、正直」になっていないことがポイントです。
復習しましょう。先にくる正直は、行動が先にきました。
「正直」が先にくるということは、指導要領では、
「まず行動することが大切。」と言っているのです。
まずは行動をして、言葉で後から補足する。
言葉を先に言って行動するよりも、まずは先にいいと思うことをやってみましょう。
動いてみて、初めて分かることがあるんです。
・ここまでは拡大解釈かもしれませんが、実際に教材研究をする際には、
「この教材は、正直に重きを置いているのか、誠実に重きを置いているのか。」
を考えましょう。
・1つの教材で両方を大切に扱っているものはほとんどありません。
たいていは正直か誠実、どちらかの色が濃くなっています。
そして、正直なら正直、誠実なら誠実、重点がどちらか分かったら、
その行動をしている人物に焦点を当てて、発問を作ります。
・では、「ぼくはMVP」は、正直、誠実、どちらに重きが置かれているのでしょうか。
ボールがかすった(当たった)という行動があり、
その後に当たったことを伝える(言葉)ことができていません。
「正直」が達成されていないところに、
この教材の葛藤部分が表れています。
つまり、正直に重きを置いて考えましょう。
・こういった学校を題材にした教材は、
子どもたちにとっては身近でイメージしやすく、
考えやすいという利点があります。
しかし、「こうすればよかった」と
方法を議論する流れになりやすいので、注意が必要です。
道徳は、行為ではなく行為を生む心を考える教科です。
・「ぼく」が当たったことを正直に言えない、という部分が
この教材の核になります。
子どもはきっと、「正直に言えないのはダメだ」
「ぼくは正直に言うべきだ」という
『べき論』で話を進めるでしょう。
しかし、その流れはちょっと立ち止まって考えたいですね。
・なぜなら、「ぼく」のように
正直に言わないといけないけど、言えない場面
は往々にして実生活でもあり、
子どもも少なからず体験しているからです。
・そんなとき「自分だったらどうする?」という問いは、
あまり有効ではありません。
見栄やプライドが邪魔をして、本当のところの経験は
子どもの口から語られることはないからです。
・ここでは「ぼく」のよいところを考えて、
「ぼく」の心情に寄り添いながら、
自分の感情を照らし合わせていくようにします。
・「ぼく」にある意味では同情に近い感情が芽生えることで、
自分も似た経験がある、と想起できます。
この教材の状況をより深く理解すると、
「自分が同じ状況だったら、同じことをするかもしれないな・・・。」と
考え始めます。
これが、自分事として考えるということです。
・自分事として考えるためには、
「自分だったらどうする?」とストレートに聞いても、
効果が薄いときがあります。
聞かれるのではなく、自分から「自分だったらどうするだろう。」と
考え始めたくなる流れが、
理想ですよね。
3 発問
ここから先は
¥ 1,000
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?