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公立病院改革2〈2006年〉首都圏100床 S市民病院(4)

地方公務員の場合は予算や現場の必要性に応じて、議会で決議等された「定数」の範囲内で人材採用を進めなければならない。
だから、施設基準が変わったからと言って、看護師を多く採用しようとするには、議会で説明して了承を得る必要がある。
(「議会」というものについては、また追って記していく)

そのほかにも「給与条例・規則」などで、給料のことは極めて厳格、精密に決められている。
これを変える、下げるというのは容易ではない。
民間でも給与の不利変更は労基ネタとして大変なことだが、公務員が自らの身を切る給与条例の不利変更をする、という行動自体があり得ない話である。

そういう中での人件費構造の分析である。
このパートについては、この病院の事務長に向けて、初めてコンサルとしてのプレゼンテーションを行った時のことを、よく覚えている。

私も若く、経験もほとんどなかったので、次のようにプレゼンした。

「この病院は、看護師の給与が高いので、これが民間並みであれば医師が一人、余分に雇用できます。ハイ、これでドクター1人分!
 さらにこの病院は、准看護師の給与が著しく高いので、これが民間並みであれば医師が三人、余分に雇用できます。ハイ、これでドクター3人分!」

こんな調子で説明していたら。
同行してきた先輩が便乗して、

「ついでに事務職員の給与も高いから、これを減らせばドクター1人分!」

と、まったく同じ調子でプレゼンに加わってきて、ちょっとおかしかった。
まったく分析作業にも加わっていないし、その構造も理解していないのに、まさに「先輩面をしないとマズい」と、思ったのだろう。


しかし、こんな程度の低いプレゼンをして喜んでいるうちは、私自身があまりに未熟であった。
その後、単純な「公民比較」の意味のなさを理解していき、さらに公立病院改革においてやるべきことを、より深く理解していくことになった。

そう、公立病院に求められている機能について、驚くほど、国・自治体の各役人も本質的に理解していないし、まして民間人コンサルなどは全然分かっていない。
建前はともかく、民間医療が「医療資本主義」となっているこの時代における、国公立病院の必要性と、その改革の必要性は別個に考える必要があり、別個に考えた上で、地域ごとに最適合理的な運営がされるべきなのだ。

この辺りの話は、追って少しずつ明らかにしていきたい。
次は、コンサル資料の最終章「ベンチマーク分析」について書いてみる。



【記してきた過去の公立病院改革】

公立病院改革1〈2005年〉北陸350床 KN病院(1)~(18)


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