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公立病院改革3〈2006年〉東北170床 公立F病院(1)

2006年の春頃に、事務所の一角が少し慌しくなっていた。
何のことはない。

「ボスがあれをやる、と言い始めた」
「○○さんがやればいいんじゃないか」
「いやおれは絶対イヤだよ、▲▲氏がやるのがいい」

と、明らかな鬼っ子案件の押し付け合いが発生していた。
よくよく話を聞くと、公立病院コンサルの事案のようだ。
それは確かに、ボスはやりたいが、ほとんどの職員はやりたくない、鬼っ子だ、、、

だが私は、初回のKN病院コンサルを経験したことで、公立病院が少し自分向きの業務だと感じ始めていたので、「やってもいいのかな」と思っていた。
すると案の定、私にも「手伝うように」とお声がかかった。
ん?手伝う、ということは主たる担当者は別にいるのかな?

と、思ったら、確かに主たる担当者はボスが養成中の次世代トップであるE氏だった。
まあ、いいか、ということで、二人で新規案件「公立F病院」に取り組むこととなった。

ただ結論としては、主たる担当者となる予定のE氏は、早々に来なくなってしまった。
僕一人でいいと思ったのか、公立病院の現場を面倒と思ったのかは分からない。
少し、エライことになったという気持ちもあったが、不思議とその状況を受け入れられた。

公立F病院は東北の地方都市にあり、聞けば多くの人が知っている市に所在する。
二市で構成する一部事務組合の病院で、当事務所の会計士が昔、通ったことがあるらしい。
ただ、通ったところでどうにもならないと、関係者一同、さじを投げたと聞いた。

まず、とにかく赤字がひどいと。改善しないと。

それから、いつかの地震(2011年の三陸沖地震のはるか前)で建物が半壊しているが、その修繕もできないほどお金がないらしい。

そしてその金欠経営の根底には、構成する二市の仲が悪く、いつも分担金額の割合を巡っていがみ合っており、計画的投資などできない環境があった。
二市いずれの議会もカネを出したくない、しかしカネを求める現場に法的な権限は一切ない・・・

典型的な、当時の公立病院の悪弊により、構造的赤字に陥っていたのである。

この仕事をボスは、大きいほうの構成市首長の専決処分案件(議会承認を後回しなどにして、市長単独で決裁する案件)として、事務所で契約した。
会計事務所のコンサル契約としては、結構金額が大きい仕事であった。

ただ、その契約内容の中で、明確であったのは
「地方公営企業法の全部適用に関するアドバイザリー」
だけで、そのほかは経営改善するだの、助言するだのと、何をするかよく分からないメニューばかりだった。

それはそうと、では一番明確であった「地方公営企業法の全部適用・・・」だが。
これが何なのかは、前回のコンサル参加で勉強したので、意味合いは了解していた。
しかし、アドバイザリーって、そんなの、できる人がこの事務所におるの・・・?

と、そう。
いつものパターンだ。
私が、やるんだ。どうせ。

やったこと? ないない、一切ない。
でも、それをやるというこの事務所の気風、そして案外コンサルタントはこういうものだという一般的感覚に、だんだん慣れてきた。


興奮してきたぞ。


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