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公立病院改革1〈2005年〉北陸350床 KN病院(8)

経営改革委員会の2回目が終わった頃、別の角度からボスが登場した。

ボスは、自治体を所轄する省庁の公的「アドバイザー」の資格を有していた。
そして所轄省庁の派遣アドバイザーという立場で、KN病院の経営状態を徹底的に批判した。
公務員である病院職員たちは、所轄省庁の派遣者に厳しく言われたら、みんなびっくりしてしまう。
そして実際に、院長以下、2回の委員会で出された資料や意見に基づいたアドバイザーの厳しい提言に、慌てふためくことになった。


公立病院改革というのは、「改革」するための方法論が、ある程度決まっている。

(1)地方公営企業法の全部適用(病院事業管理者の設置)
(2)地方独立行政法人化(公務員型)
(3)地方独立行政法人化(非公務員型)
(4)指定管理者制度の導入(公設民営)
(5)民間への譲渡(民設民営)

上記(1)~(5)は、下に行くほど、経営状態がやばい病院に適用する改革手法になる。
ボスは、その中でも(4)か(5)による改革が必要、と断言公表したのである。

これを言ったことで、「この病院は民間に身売りされる」と、地元も病院も騒然となった。
病院事情が分からない初心者の僕でも、「これを言っちゃマズいんじゃ」ということは分かった。

実際に、これから答申を出そうという委員会の委員たちの間でも、そこまでする必要があるのか?
委員会が結論を出す前に、アドバイザーがあのタイミングで、ああいうことを言うのは困る。
と、全体の進行にも支障が出始めた。

しかし、結果としてボスのこの辛口ぶりが、この公立病院業界におけるボスの存在感を、全国にPRするきっかけとなったのである。
この辺りが、彼はうまい。

その後、さらに波乱を呼んだのは、ボスが辛口提言をしたことに、僕の先輩税理士が便乗したのだ。
「アドバイザーの・・も、こう言っている。だから(4)(5)しかないのだ!」
と、、、

こうなると、まとまるものも、まとまらない。
委員たちも、この事態をどう収拾していいか、悩むことになる。
病院の人たちも、「アドバイザーの提言を、業務受託者がプッシュして民間に売らそうとしている」と、非常に反発した。

素人の僕から見ても、こりゃー反感買うよな、と思える。
結果として、ボスの名売りには成功したが、業務としては失敗だったのでないか、という感じがした。




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