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風が強く吹いている

盛岡気象台が平年より三日遅い初雪観測を伝えた朝、遠野には強い風が吹いた。

空は低くどんよりとして、雲は重そうにそのからだを横たえている。

職場へ向かう朝、枯葉がいきおいよく舞う道を垣根伝いに歩いていると、垣根の向こうの高校からたくさんのはしゃぎ声が聞こえてきた。なにに盛り上がっているのだろう。垣根が途切れ、高校生たちのはしゃぐ姿が見えると、まだ開かぬ体育館の扉を前に、彼ら彼女らは風の寒さに笑い、声をあげ、はしゃいでいるのだった。

風が強く吹いているというだけで、あれほどはしゃげる心をわたしはいま持っているだろうか。

小川ではマガモの親子連れが水面に浮かびくるくると、その身を風にまかせて遊んでいた。

強い風は午後になっても衰えることなくびゅうびゅうと街路樹を揺らし、道路に散った枯葉をあっという間に運んでいった。

午後には郵便局へ行く用事があったので、その道を理由もなく全速力で走ってみる。冷たい風がちりちりと頬を刺し、息は弾み、からだは火照り、髪はばさばさと波打った。届いていた荷物を受け取りもと来た道を全速力で走って戻る。冷たい風に足はもつれ、息は上がり、からだから酸素が抜け、髪はぼさぼさになった。そして、わけもなく心がはしゃいだ。

風が強く吹いている。



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