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11月30日
2日前、道ばたで声をかけてきた女性のことがひっかかっている。東南アジアの生まれであろうその女性は、人懐っこい表情で「すみません」と声をかけてきた。道を聞かれるのかと思ったがそうではなく、たどたどしい日本語で書かれたカードを指差してわたしに見せた。そこには、生活が苦しいので買ってほしいという趣旨のことばが並び、なるほどなにかを小分けにした袋をカゴいっぱいにして持っている。
わたしは取材に向かう途中で、そのことで頭がいっぱいだったことと、むかしマカオで老婆にお金を騙し取られそうになったことが過って、すみませんと頭を下げて立ち去ってしまったが、いまになってひとつだけでも買ってあげたらよかったと後悔している。ひとつ売れたくらいでは生活の足しにもならないだろうが、ひとつ売れるだけでこころの救済にはなったろう。こういう時期で仕事探しにも難儀していたのかもしれないのに。
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