本の話は尽きない

『嫌われる勇気』を古賀さん、柿内さんと一緒に二年かけて作った書斎があまりに手狭になったので部屋を借りることにした。もう四年になる。
 今は取材や打ち合わせのために稀に人が訪ねてくるくらいだが、机の上に本を散乱させたままにしてはいけないと意識し、本も目につくところにはあまり置いていないので、わりあい部屋の中は乱れていない。
 書棚に並ぶ本を見るとどんな人かわかる。そのことを知っているので、あまり自分の書棚を人に見られたくない。もっとも部屋に入ってきて、いきなり書棚に並ぶ本を熱心に眺める人はそうそういないのだが。
 反面、私を知ってもらうためには私が読んできた本を見てもらうのが一番早いとも思う。もっとも私は蔵書家ではないし、多くの本が並んでいる書棚を前にして、私はこれだけの方がなければ何も考えられないのだと見られるのは好まない。
 取材や打ち合わせにこられた人と一頻り話をした後、書棚に並ぶ本について話が始まることがある。そうすると、また話が始まる。話をしている時に、私の背面にある本を見て話されていたのだろう。
 いつかソファに腰を下ろした途端に、「その本は私が作った本です」といった編集者がいた。たくさんの本の中からたちどころにして見つけられたことに驚いた。こんな時は最初から本の話になり、仕事は後回しになる。もちろん、私は大歓迎だ。

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