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【R18官能小説】官能作家"霧山純生"の情事 妄想ガール 第13話

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姫初め⑤

 離れに戻った私たちを明るい声が迎えた。

「お帰りなさい」

 この旅館の探検に行くと言っていた美月が、すでに座敷で寛いでいた。見ていたスマホを置き、はにかんだような笑みを向けてきた。その顔を見ながら、やはりと確信する。

 大浴場で麗奈を可愛がっていたら、視線を感じたのだ。誰かに見られていると。振り返ってみたものの、湯気のせいで見通せない。無論、それは私の気のせいかもしれない。この旅館の主人がこっそり覗いていたのかもしれない。しかし今、美月の態度を見て確信した。覗いていたのは美月だ。何度も数えきれないほど肌を合わせてきた女だから、わかる。

 まったく…美月も麗奈も、かわいい女どもめ。

 私をシェアするとか言っておきながら、この女たちは、気心を許した親友同士であり、かつ、ライバル同士でもある。

 だが、と、そこで複雑な思いが込み上げてくる。

 美月は、地元では有名な老舗高級料亭のひとり娘。彼女の仁科家は、かの武田信玄以前から在った豪族が祖だ。麗奈の氷見家も仁科家に匹敵する由緒ある家柄であり、現在の氷見家の広大な敷地と豪奢な邸宅を見れば、今もなお、その栄華が続いていると知れる。

 それほどの名家の末裔である可憐な娘たちを抱く私には、誇るべき由来もなにもない。普通の庶民だ。資産はあるにはあるが、彼女らの家とは比べようもない。それなのに、美月と麗奈は、そんな、なにもない私を、なぜ、と思うのだ。

 女を抱くのに家柄など関係がない、彼女たちの思いもきっと私と同じなのだろうと、そうでなければ私たちの関係は成り立たない、と、頭では理解していても、である。

「先生?どうかなさいましたか?」
「…ん?あ、いや。別に、何でもないさ」

 不思議そうな顔の麗奈に覗き込まれ、もの思いから我に返る。

 ほどなくして、夕食の時間になった。郷土料理のほうとうに、地元で取れた川魚やらや野菜の天ぷらなどが、次々に運ばれてくる。

「わあ」
「おいしそう」

 浴衣姿の若い娘たちがはしゃいだ声を上げる。そして私はまた複雑な思いが…。

 ここは彼女らの地元であり、彼女たちふたりは、特に美月は、なんといっても料亭の娘なのだ。日頃からもっと高級な和食に慣れ親しんでいるはずだ。それなのに、美月も麗奈も、ごく普通に振る舞い、今まで彼女たちが、気取った態度や言動ひとつ見せたことがない。それは育ちが良いのだと、一言で済ませることもできるが、この娘たちは、いわゆる「お嬢様」であり、本来ならば…。

「先生?霧山先生ってば!」
「あ?あ、ああ」
「もう!上の空なんだから」
「さっきから変ですよ」
「ああ、う、うむ」

 ふたりの愛らしい娘たちに睨まれてしまった。


第14話へ続く

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