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【ハードボイルド】カレン The Ice Black Queen 第十一話 with Miles Davis "Move"

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♦︎あらすじは第一話をご覧ください

Miles Davis “Move”

襲撃

 バックミラーに写っていたパトカーの姿がな無い。はぐれないようにゆっくり走っていたつもりがだ。

「カレン。警察から返還された、君のベレッタを出してくれ」

 ハッとしたようにカレンは俺を見た。なにも言わずにハンドバッグから拳銃を出した。

「弾は入っているか?」
「ええ」
「撃てるか」
「撃てるわよ」

 それは頼もしい。

 前から黒いバイクが走ってきた。マスタングとすれ違う。サイドミラーの中で、通り過ぎたバイクがターンするのが見えた。俺はアクセルを踏み込んだ。

 交差点で右折、後輪が悲鳴を上げる。しかしバイクのほうが早い。あっと言う間に追いついてくる。

「伏せろ。カレン」

 左に並んだバイクの男の手に黒い拳銃があった。俺は左にステアリングを切った。マスタングとバイクがぶつかる。ゴスっと音がした。よろけたバイクが下がる。だが立て直した。また追いついてくる。

 パンと鳴って、後部のウィンドウが割れた。バイク男が撃ったのだ。左右にステアリングを切り、蛇行しつつ、バイク男の照準を逸らす。ベレッタに援護してもらうとしよう。

「カレン…」
「撃ってもいいの?」
「えっ」
「あいつをやっつけてもいい?」
「あ。ああ。頼む」
「任せて」
「そのう…できれば殺すな。タイヤを狙え」
「わかったわ」

 サイドウインドウを下したカレンが、まさかと思ったが、体を乗り出した。

「おいカレン!危険だ…」

 ベレッタの射撃音。冷静に間隔をおいて、四発撃った。途端にバイクが転倒した。乗っていた男が吹っ飛ぶ。ヘルメットで顔はわからないが、ターゲットの女に撃たれるなんて、思ってもいなかっただろう。俺も正直なところ、驚いていた。

「うまいんだな」
「ありがとう」
「俺より腕が良い」
「そう?助手に雇ってくれるかしら」
「…えっ、あ」
「冗談よ」


(続く)

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