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僕は「さわやか」に何を求めていたのだろう

三月中旬の三連休に、浜松近辺でキャンプをする流れで、念願の「さわやか」に行くことが出来た。
そう、あのげんこつハンバーグの「さわやか」
御殿場アウトレット近辺では最大520分待ちを記録したといわれる、あの「さわやか」である。
いつか食べてみたいと胸に仕舞い込んでいた思いがこの度ようやく叶えられたのである。

しかし、完全なる個人の見解ですが、私は「さわやか」に幻想とも呼んでよい、過度な期待をしすぎていた。(させられていた)
「さわやか」は、あげられすぎたハードルを超えてくることは無かった。

「さわやか」とは何か

おそらく知らない人はほぼいないだろうし、もしかしたら多くの人は行ったことがあるのかもしれないけれども、簡単に説明をしておくと、「さわやか」は静岡県内のみに店舗を構える、ハンバーグファミレスチェーン。
まるっとしていてデカめ(250g)のげんこつハンバーグが看板商品で、店員さんが「肉汁たっぷりに焼きますね」という掛け声と共に半分に切り、断面を鉄板に押し当て、「ジュ〜!」といかにも食欲をそそる音をたてる提供パフォーマンスが有名。
中がレアという、断面重視の現代にシンデレラフィットし、今なお人気が衰えていない。

画像は公式インスタから拝借

上述の通り、待ち時間がエグいことでも有名で、平成令和転換期で、伝説の10連休、まだ自由に外出出来た最後のGWである2019年5月1日には520分待ち(8時間半)を記録したらしく、普通の休日でも300分待ちなどはザラである。

ストーリーズとかTwitterとかで見かける度に「うまそうだなぁ」と思っていたし、
「肉汁がすごい!」「肉汁が溢れ出した!」みたいな文言を見るたびに想像が掻き立てられ、グルメ漫画のやばいハンバーグが現実に食べられるのかと期待に胸を膨らませ続けていた。
膨らませていたんだよなぁ〜〜

実際、まぁ美味かったんだけども

我々が道中キャンプの買い出しで立ち寄ったイオンに「さわやか」が入っており、御殿場などの首都圏から人々が押し寄せるエリアでもなかったので、幸運にも1時間待ちで入店することが出来た。
(なお、全店舗待ち時間一覧を見ると御殿場店は360分待ちとなっていた)

やはり看板商品ということでベタ好きの僕はげんこつハンバーグを注文。
待つこと10分ほどで着丼。

「これこれ!」
ジュウ〜してもらう。
「見たことあるやつや!」
店員さん『完成です!』
「うまそう!いただきます!」
.....まぁ、美味いな


いや、美味いんだけども。
「まぁ、美味いな」でした。

中がレアなハンバーグはこれまで食べてきた記憶があまりないし、それを可能にしている「さわやか」の企業努力はすごいと思う。
けど、僕らは「さわやか」に何を期待していたのだろうか。
ハンバーグはあくまでハンバーグ、そんな、肉汁が溢れて溢れて仕方がないなんてこと、あるはずがないのに。
少なくとも僕は、『天才料理少年 味の助』レベルの「肉汁が溢れて止まらない!!」みたいな現象を期待していました。

いや、美味かったんだけどもな〜〜
あの過度な期待が無ければ十分満足できたはずだし、こんなnoteを書くこともなかったはずなんだ。
決して、世の中の逆張りのことを言いたいんじゃないということを理解してください。
(もしかしたら多くの人が同じ感想かもしれないけど)
美味かったんですよ、たしかに「さわやか」は美味しかった。あの価格であの新鮮な肉を楽しめるファミレスは凄い。
でも、僕は自分の中で膨らみすぎた幻想のハンバーグ像を超えることは出来なかった。
それがマジで純粋に悲しいんです。

悪いのは誰?世の中か。

このnoteを書きながら、ふつふつと怒りというか、やるせ無い気持ちが沸き起こってくる。
悪いのは誰だ?
あの時、「肉汁が爆発〜!!」みたいな記事を書いたライターか?
あの日、「念願のさわやか!うますぎて幸せ〜!」と投稿した友人か?
それとも、『天才料理少年 味の助』の作者か?

いや、答えはわかってる。世の中なんだろうな。
世の中。
過度な表現を無意識で強いている世の中なんですよね。

ちゃんと正しい情報をインプットしている訳ではないので、「違うよ?」ってことを言ってたら(こっそり)教えて欲しいんですが、
やはりバズありきの情報の作り方が正義となってしまったアテンションエコノミーが悪い、と僕の中では結論づけています。
「さわやか」は、言ってみればアテンションエコノミーによって過度に崇め立てられてしまった虚構の存在であるわけです。

そもそも、「さわやか」が全国区になったのは、2007年に静岡出身の長澤まさみがTOKIOの番組で紹介したことがきっかけらしいです。
元々は地元民に愛されるローカルチェーンだった「さわやか」が、
長澤まさみをはじめとして静岡出身や縁のある芸能人にテレビで幾度か紹介され、徐々に認知度が上がっていき、
そしておそらく御殿場アウトレットとかで日帰り行楽に行く人たちがSNSに上げることで「行くと“分かってる”感のある店」になり、
完全に偏見による断定ですが、バズらせ屋のメディア達が飛びつき、より多くのPVを稼ぐために
「やばいハンバーグ」
「肉汁がやばい」
「肉汁が溢れる」
「肉汁が大洪水!!」
と盛りに盛られていき、
そしてついには現実からは大きく逸脱したファントム肉汁モンスターハンバーグとなってしまったんだと、僕は考えています。

何が肉汁が大洪水だ、ふざけんじゃねぇ。
ちょっと中がレアな、普通に美味いハンバーグだよ。

最近本当によく見かける、盛りレポにはアタシはうんざりだ
「かつや」が丁度いいんだよ

「さわやか」に限らず、本当に昨今多すぎませんか?盛りレポが。
無限に食い続けられる○○とか、
人生初の○○とか、
ガンギマリに整う○○とか、、

もういい、本当に、もういいんだ。
お前たち、もう、そんなに、過度に期待させないでくれ....
そんなに過度に期待させるから、本当はいいものなのに、本当は満足できてるはずなのに、なんかガッカリしちゃうじゃないか。
なんだか、こうした盛りワードに振り回されるのは疲れてしまったな、と改めて感じた「さわやか」訪問でした

僕を含めて三人で「さわやか」を訪問したのですが、全員極めて同じ感想でした。
「まぁ、美味いくらいだな」と。
360分待って食べたとかじゃなくてよかったと心から思った。
60分イオンでダラダラ時間潰ししながら待て本当に良かった。
過度な盛りワードにより期待がふくらみ、
過度な待ち時間によってさらに過度に期待が膨らみ、
まぁ美味い、くらいの体験だったけどもそれまでのコストを弔うために盛りワードをつけて発信せざるを得ない、
そんな負のスパイラルに巻き込まれなくて本当に良かった。

もともと、道中で友人達と
「さわやかは混んでるから、かつやでええんちゃう?」
と冗談を言いながら「さわやか」に向かっていました。
今から思うと、あの発言は正しかった。
「かつや」の、大してバズ盛りされないけども、安価でまぁ美味いカツ丼を提供し続けるあの姿勢。
並ばずに入れるから、「まぁ美味い」で大満足して退店して、カフェだったり買い物とかにも行ける、「かつや」。

改めて気付く。
「かつや」で丁度いいんだよ。

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