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【こんな映画でした】364.[ビリーブ:未来への大逆転]

2021年 6月21日 (月曜) [ビリーブ:未来への大逆転](2018年 ON THE BASIS OF SEX アメリカ 120分)

 2021年 3月に読んだ『ジェンダーで読む映画評/書評』(杉本貴代栄 学文社 2020年)で紹介されていた映画。ミミ・レダー監督作品。初めて。

 主人公はフェリシティ・ジョーンズ、撮影当時34歳。つい最近観たばかりの[怪物はささやく](2016)で、母親役をしていた。その夫をアーミー・ハマー。ベテランの弁護士役でキャシー・ベイツ(これで5本目になる)。なおラストシーンで主人公のルース・ベイダー・ギンズバーグ自身が歩く姿がとらえられている。ノークレジットだが、見れば分かるからだろう。名前でいうと「~バーグ」と付くのは、やはりユダヤ人が多いのだろう。スピルバーグとか。

 作中、「すべてに疑問を持て」との主人公の母親の言葉が紹介されている。その通りだろう。原題は「性別を理由(根拠)とすることについて」といったあたりか。「basis」には他に「土台、基礎、基盤、叩き台、原理、基剤、基準、中心」といった意味も。

 スタートは1959年とあり、ハーバートの法科大学院に女性の入学が認められてまだ6年と言っていた。女性差別のきつい時代であったことは間違いない。もちろん黒人やヒスパニック等々についても同様であろう。

 この映画でのポイントは、女性の受けている差別を直接ぶつけるのではなく、裁判で逆に男性が親の介護をする際の費用が税控除されないという論点なのだ。これも男女差別の一つである。これを橋頭堡に170あまりあるとされる法律上の女性差別を一つ一つ撤廃・是正させていこうという壮大なものなのだ。

 いずれにせよ非常にストレスフルな仕事・活動である。精神力がないとすぐに潰されてしまう。控訴裁判所の3人の判事たちも、強烈な攻撃を加えてくるのだ。それをいかに乗り切るかという手腕・実力が要求される。難しい仕事だ。

 しかも女性・子持ち・ユダヤ人という三つが列挙されているように、徹底的に差別される側・弱者になるわけだ。それを「民主主義」の理念で闘うわけだ。判事が皮肉を言う。合衆国憲法には「女性」という言葉は一つもない、と。それに対してルースは「自由」という言葉もない、と斬りかえしていた。

 どうやら合衆国憲法もそれが作られる際には、「女性」のことも、人々の「自由」のことも念頭になかったということかもしれない。そのような憲法に立ち向かうわけだから、相当の技術がいることになるだろう。

 とまれ、特に女性が外でこのように活動しようとすると、家族の応援がないと難しい。理屈ではそれはおかしいのだが、現実は女性のほうに負担が大きいのは紛れもない現実であろう。

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