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【こんな映画でした】615.[冬の光]

2023年 3月31日 (金曜) [冬の光](1963年 NATTVARDSGASTERNA WINTER LIGHT スウェーデン 82分)

 イングマール・ベルイマン監督作品。英語字幕版。神についての深刻な内容の映画である。両親から将来、牧師になることを期待されていた主人公トーマス(グンナール・ビョルンストランド、撮影当時52歳)が、牧師でありながら神の沈黙、あるいは四年前の愛妻の死について、「神様、なぜあなたは私を見捨てたのですか?」と問いかける。

 この独身となった牧師を慕い愛するようになった女性マルタをイングリッド・チューリン(撮影当時36歳)。彼女のある種病的とも言えるトーマスへの献身と愛情を、トーマスは受け入れることはない。それは亡き妻を愛しているからであり、まったくマルタの入り込む余地はないということ。しかし彼女は執着する。長い手紙を彼に届けるが、彼は読もうともしない。

 しかし慫慂されてその手紙を読むことに。このシーンははじめトーマスが読み始めるが、まもなくマルタのアップになり、彼女がカメラ目線で手紙の文面を話しかけていくことに。もちろんそこに二人がいるわけではない。虚構である。

 このマルタの愛情と神への愛との関連などが、この映画の一つのヒントになるのかもしれない。トーマスは牧師でありながら、妻を失ってからは、もはや神への愛を失い、あるいは疑問を持ち、神を信じ切れなくなっているのかもしれない。それでも仕事として、教会に来る人々に神への愛を説かざるをえないのだ。その矛盾の中にトーマスは悩みつつ生きている。そのことにマルタがある意味同情して、愛情を持つようになったのかもしれない。

 しかし、それが受け入れられることはない。トーマスには、そのような心の余裕はないのだ。結局、不幸の根源は、このキリスト教信仰にあるのだと解釈できないこともないかもしれない。もちろん私見だが。

 あとマックス・フォン・シドーが出ているが、彼は核に対する恐怖を持っているようである。そして彼は自殺する。トーマスとマルタとのやりとり以外では、この自殺事件がエピソードとしてあるくらいだ。

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