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【こんな映画でした】404.[誘惑されて棄てられて]

2023年 1月 5日 (木曜) [誘惑されて棄てられて](1963年 SEDOTTA E ABBANDONATA SEDUCED AND ABANDONED イタリア 123分)

 ピエトロ・ジェルミ監督作品。題名に怖気を振るって、これまで観てこなかったが、これは失敗だった。もっと早くに観ておけば良かったという意味である。良い映画であった。佳作だ。内容のシリアスなことは、たんに邦題のようであったわけではない。

 この主人公となるアネーゼをステファニア・サンドレッリ(撮影当時17歳か、役柄の16歳であったかもしれない)、やはりまだ幼さを残している。後の[暗殺の森](1970)では妖艶な女性に変身している。

 映画が始まるやカルロ・ルスティケリの音楽が映像とともに流れ出す。その映像は主にアネーゼが歩いて行く姿。そして音楽には歌詞がつけられて男性が歌う。約2分間。以下のようである。

 これよりごらんに入れるのは、アスカローネ一族の物語。嘘偽りは一切なし。まことの物語である。誇り高き一族の娘、マチルデとアネーゼがペッピーノという美男子に名誉を傷つけられた。情熱的なアネーゼは、犯した罪を償おうと神父を訪ねてすべてを告白した。

 この内容だけで、これから先、何が展開されるかが予測できる。ただその展開は単純ではなく、ある種のどんでん返しがあり、最後までぐいぐいと観させられてしまう。キャスティングが良いというべきか、特に父親役の俳優が良い。敵役のペッピーノの役者には気の毒であるが。

 時は20世紀後半、テレビやドラム式洗濯機も見られる。場所はイタリアでも特に個性が強そうに思われるシチリアである。カトリック教会の力は強く、その人々におよぼす影響は絶大である。そして離婚も中絶も許されないという社会である。

 解説によると、この離婚を禁じたイタリアの法律を何とかしたいとということもあって、この映画も作られたらしい。そういえばソフィア・ローレンも離婚できなかった時期が長くあったような。

 ラストはペッピーノの無罪獲得、アスカローネ一族の誇りと名誉を守るためにアネーゼとペッピーノは結婚する。その直前にはアネーゼの父親が亡くなりかけているのだが、死んだとなると結婚が伸びてしまうというので、その事実(実際は式の前に死ぬ)を隠してまで結婚式をやってしまうのだ。その時の映像は、二人ともこれ以上ない不愉快な表情である。しかもペッピーノがアネーゼに結婚指輪をはめようとしてもなかなか入らない、というふうにしている。

 ラストシーンはその二人の何とも言えない苦り切った表情で終わる。愛のない結婚、離婚できないことからくる制約などを声高にではなく訴えているのだろう。

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