【こんな映画でした】694.[靴に恋して]
2020年10月31日 (土曜) [靴に恋して](2002年 PIEDRAS STONES スペイン 135分)
ラモン・サラサール監督作品。初めて。やはりヨーロッパ映画と言うべきか。説明的でなく、カットがどんどん切り替わっていく。オムニバス風に、女性達の生き方を点描していく。普通の映画らしい映画というのとは違っている。
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アニータの母親アデラ役はアントニア・サン・フアン、撮影当時40歳くらいか。[オール・アバウト・マイ・マザー](1998)を観ている。アニータの世話をする学生ホアキン役は、エンリケ・アルキデス、撮影当時27歳くらいか。若く見える。
原題の「piedras」はスペイン語で「小石・石ころ」といった意味らしい。で結局、どういうことになるのかは、これから考えてみたい。所詮、人の人生というのは小石ほどの価値しかない、とでもいうのだろうか。あるいはここでの登場人物たちが、みんな小石ほどの価値しかないというのか。それはないと思うが。
たしかにアニータは28歳の女性なのに、実態は7歳の女の子なのだ(2月29日生まれなので母親はそう言う)。黄色いスニーカーを履いて散歩する。幼い子どもらしい絵を描いている。
当初は飼っている犬が大好きで、絵にも自分と犬が描かれている。それがホアキンが登場することで、絵から犬が消え、彼が描かれることに。なかなか分かりやすい。とまれ人を好きになることは良いことだ。辛いことにもなるが。
そのアニータの散歩コースには、街角に立つ女たちがいる。三人。街娼ということになる。彼女たちがアニータとホアキンのカップルを冷やかす。実はアニータの母親アデラも元は売春婦で、今はそのクラブの仕切り役をしている。
アデラに言い寄ってくる男性レオポルドは、スペインにおける上流階級なのかもしれない。その妻イザベラ(離婚寸前)と友人たちの会食シーンで、彼女たちの一人が夫に養われている売春婦みたいなものよ、というところがある。
たしかに結婚によって得られた経済的な豊かさは、言葉は悪いが売春婦同様の見返りなのかもしれない。イザベラがその家の一室に靴のコレクションをしているが、そのように集め出したのは結婚してから、と。つまりストレス発散で収集したということだろう。
若いレイラは靴のデザインをしているが、芽が出ない。靴屋で働くのだが、時折そこの商品を盗んでいるようだ。(そういえばイザベラの友人が万引きをして、という話も出てくる。)結果としてクビになり、恋人とも別れ、今いるマドリッドからリスボンへ転居していく。
そのレイラの血の繋がりのない継母にあたるのが、タクシー運転手として働くマリカルメン。前夫の子どもたち姉弟と三人で暮らす。弟はそうでもないが、姉の方は継母に辛く当たる。そういったストレスの中に労働者として日々を送っている。
別居していた一番上の姉がレイラで、お終いには彼女とも仲良くなれているようだ。同居中の姉の方とは、この先もまだまだ困難が続くようだが。なおレイラと同じ職場の若い男性はゲイとして登場する。様々な愛情の形が紹介されている。
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ともかくこれは女性の映画。女性の生き方・有様を描く映画だということ。そういえばやはりスペイン映画で[オール・アバウト・マイ・マザー]を思い出させる。同じ系統の映画なのかもしれない。
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