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【こんな映画でした】453.[雨月物語]

2022年 9月27日 (火曜) [雨月物語](1953年 97分)

 溝口健二監督作品。田中絹代(宮木)に森雅之(源十郎)、そして何とも妖艶な若狹役の京マチ子。おそらくこの監督の作品を初めて観るので、そのカットの短さや、ロングでのシーンの撮影など新鮮に観ることができた。ただ音声は字幕に頼らないと私には分かりにくかった。その点邦画であっても字幕はこれからは必須だろう。

 さて、この有名な映画をようやく観ることができた。以前、廉価版で観ようとしたのだが、あまりにもその映像の質の低さに観るに堪えなかった。諦めていたら、このようにマーチン・スコセッシ監督によってリストアされたものが手に入り、観ることに。妙な言い方だが、普通に観ることができた。洋画でもそうだが、あまりに画質の悪いのは生理的に無理だということだ。そういう意味でも、このようにリストアをしてくれるのはありがたいことだ。そのかわり膨大な費用と時間が掛かるのだろうが。

 時は戦国時代、場所は琵琶湖の北岸とテロップで最初に出てくる。固有名詞も柴田や織田が出てき、ラストでの宮木の墓標には「天正十一年」と見えた。西暦では1583年で(前年に織田信長が本能寺の変で死んでいる)、おそらく賤ヶ岳の戦いで柴田勝家が敗れ、豊臣秀吉が信長亡き後を掌握した頃だろう。

 戦争は人を変えてしまう、と言わせているが、男性の中にはこの機会に立身出世を夢見る人が出てくるものなのだろう。弟・藤兵衛がそうである。妻のためにという名目で、妻を故郷に置いて(捨てて)武士になろうとしている。兄の源十郎は、死霊とは知らずにそれに取り憑かれ、妻子を忘れ、夢のような世界に浸ることに。

 この兄弟は最終的に故郷に戻れ、元の生活に戻れるのだが、その代償というか犠牲として源十郎は妻・宮木を失ってしまうことに。ラストシーンはその遺児を映しながらチルトアップして、その田舎の状景でエンドマークが出る。

 音楽は早坂文雄だが、概して抑え気味で、全編に音楽が流れているわけではない。無音というか、生活音だけで音楽がないというのも効果的だと感じさせられた。

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