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【こんな映画でした】55.[ブラックボード 背負う人]

2021年 1月 4日 (月曜) [ブラックボード 背負う人](2000年 TAKHTE SIAH イラン/イタリア/日本 85分)

 1977年生まれの女性、サミラ・マフマルバフ監督作品。これが封切られた2001年には、この映画の存在を知らなかった。そして「9.11」やイラク戦争でフセイン大統領が殺されるのは、この映画のあととなる。

 オープニングシーンは、荒涼たる土色の不毛の土地。そこに10人余りの異様な荷物を担いだ男たちが道を歩いて行く。その荷物こそブラックボード、黒板であり、その男たちは教師なのだった。
 イラン・イラク戦争で分かるようにこの隣国同士は敵対し合っている。村が学校が爆撃され、彼らの仕事も奪われたまま。そこで生徒になる子どもたちを求めて放浪しているのが彼らである。

 そんな中から二人の教師に焦点を当てる。一人は村人たちと行動を共にし、イラク国境まで行く。もう一人は密輸に従事する子どもたちと出会い、彼らに言葉を教えようとする。そのほとんど歩くばかりの状景を描写していく。
 結果として、前者はイラク国境まで送り届け、別れてイラン側に戻る。今一人は羊の群れに隠れて荷物を運んでいた子どもたちと運命をともにすることとなる。射殺されるのだった。一方は別れ、もう一方は死、という結末であった。

 唯一といっていい女優はバフマン・ゴバディ。教師の一人で彼女と結婚し、国境で離婚することになるサイード・モハマディ。他は子どもたちがここでも良い。何とも悲惨な映画であるが、これが世界の実態なのだと思い知らされる。
 監督は撮影当時20歳くらいとのこと。父親はやはり映画監督のモフセン・マフマルバフ。この映画を観る切っ掛けは、[11'09''01/セプテンバー11](2002年 11'09''01 - SEPTEMBER 11 フランス 134分)の彼女の短編を観たから。

 この短編でも、今作でもそうだが、教師の教え方としてはもう稚拙としか言いようがないのだが、それが現実だったのだろう。

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