【こんな映画でした】312.[クラウドアトラス]
2021年10月12日 (火曜) [クラウドアトラス](2012年 CLOUD ATLAS アメリカ 172分)
ラナ・ウォシャウスキー監督(女性)とトム・ティクヴァ、アンディ・ウォシャウスキーの3人が分担して撮ったそうだ。原題は「雲の地図帳」?。エピソードが6つあり、それぞれ場所も時代も違う。
この6つの時代を描くそれぞれのエピソードが、カットバックでどんどん交代して出てくるので、最初は何が何やらさっぱりであった。だんだんとこの6つの内容が知られてきて、また同じ俳優が違う時代で演じているのも分かるようになっていった。もっとも完璧には分からなかった。なんせメーキャップが凄まじいので。
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一番古い時代は原始的な生活を送る人たちの争いが出てくる。いずれのエピソードにあっても共通して「弱肉強食」という言葉が出てくる。まさに内容は戦い・殺し合いであり、その弱肉強食のありさまを描く。
この一番古い時代は、オープニングシーンでトム・ハンクスが述懐している内容の時代。ラストシーンはオープニングシーンの述懐の続きであり、その終わり。いつのことか分からないが、その古い時代から救出されて宇宙のどこかの惑星で彼は生きている、ということに。
19世紀(1849年)では南太平洋での奴隷貿易船が(金目当てに毒殺されかけた主人公を黒人奴隷が助けてくれることに)、20世紀(1936年)ではスコットランドでの作曲家の青年が(自作を高名な作曲家に奪われかけ、殺してしまうことに。曲の完成後、自らも自殺する。曲名は「クラウドアトラス六重奏曲」)。20世紀(1973年)では女性ジャーナリストが原子力発電がらみで命を狙われる。
21世紀に入り、2012年のイングランドでは老人ホームというか、親の介護施設が舞台。非人間的な様子を描く。そこからの脱出劇でもある。そしてもう一つ22世紀(2144年)の超管理社会。場所は朝鮮半島か。暗澹たる未来を描く。そこでは映画[ソイレント・グリーン]のような内容も出てくる。
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このような未来の超管理社会を描いた映画には、ある種のパターンがある。まずエネルギー源としては、おそらくだが原子力発電。そこに住む人々の内、支配者は真っ黒あるいは真っ白な制服に身を包み、無機質な表情でたんたんと非人間的な仕事をこなす。その配下の武器を持つ兵士は全身黒ずくめで顔も見えない。生活の何もかもが電子制御で、ボタン一つで物事が進んでいく。ただ被支配者たちは、科学の発達した22世紀とは思えないような劣悪な環境で、動物のように暮らしている。
そのような支配者・政府に対して批判的な思考を持つだけで政治犯罪として処罰、つまり抹殺されていく。――これが未来社会のようなのだ。現状から推測するしかないので、どうしてもこのような悲観的な、あるいはオーウェルの『1984年』のような社会しか思いつかないのだろう。私たちの思想の貧困さもあるかもしれないが、現状のシミュレーションはそのようにしかならないのかもしれない。
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結局、この映画は輪廻転生や歴史は(愚かなことを)繰り返す、さらに基調には弱肉強食がある、といったことを描くのか。およそハッピーエンドからはほど遠い。しかし、まさにこれが現実か。
メイキングを観る。やはり6つの時代に出てくる人たちは、輪廻転生というか生まれ変わって、それぞれの人物になっていっている、と監督が言っていた。西洋の考え方で、この輪廻転生というのはあるのだろうか。
現実には、人は生まれ変わっていくはずはない。これが前提だろう。その上で、このようなことがあればいい、とか、このようになっていって欲しいとかの願望が、そのような思考をもたらすのではないか。たとえ非合理的であろうと、腑に落ちる・納得できることを人々は求めているのだと思う。