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【こんな映画でした】810.[ジーザス・クライスト・スーパースター]

2023年 1月29日 (日曜) [ジーザス・クライスト・スーパースター](1973年 JESUS CHRIST, SUPERSTAR アメリカ 106分)

 ノーマン・ジュイソン監督作品。1980年8月21日に映画館(今はもうない大阪・毎日文化ホール)で観ている。その後、ずっと気にはなっていたが、観る機会がなかった。ようやく今回ブルーレイディスクを、それも手ごろな価格になっていたので購入。思いの外映像がきれいであった。劣化していない感じ。レストアがなされているのかもしれない。

 二回目とはいいながらも、初めて観るのと同じで新鮮であった。そしてこのユダを中心とした発想が、なかなかのものだと思った。たしかに主役はジーザス・クライストかもしれないが、彼を客観的に見て、彼のことを思い、忠告をしたのはユダであった。

 果たして彼のアドバイスは聞き入れられることなく、やむなく密告という形でゲッセネマの園にジーザス・クライストがいると告げる。彼はどうして人一倍ジーザス・クライストのことを思っている自分が、こんな役割を果たさねばならないのかと神を恨む。

 ジーザス・クライストの行動は、あたかも死に向かう道筋を分かっていながら歩んでいったようなものだ。もっと上手いやり方・少々の妥協もすれば、その命を永らえたかもしれない。ただ、それは許されなかったのかもしれない、神によって。つまり犠牲がなければダメだということなのだろう。

 ジーザス・クライストはそれに気がついていたのだろう。だから悠然と死に趣いたということだと思う。一人間としてのジーザス・クライストには、気の毒な話である。しかし預言者として、それを覚ったならばその道を歩むしかなかったのだろう。

 それにしても大衆というのは「賢にして愚」とは言うものの、基本的には愚かなものだ。一度はジーザス・クライストをもてはやし、王のごとくに見ていた彼らが、一旦ことがあると手のひらを返すのだ。映画では短い時間でその様が描かれるので、なぜジーザス・クライストが糾弾され、死刑にされねばならないのかが、あまりよく分からない。

 キリスト教原理主義の人たちからすれば、この映画はとんでもない内容なのかもしれない。またロックオペラという、形式そのものに反感を持つかもしれない。映画では若者たちがバスに乗ってやって来て繰り広げられる演劇としての体裁をとっている。ジーザス・クライストはその昔の扮装だが、他の出演者はジーンズにTシャツなど現代そのままの姿なのだ。また監督による音声解説版を観てから考えてみたい。

2023年 2月 3日 (金曜) [ジーザス・クライスト・スーパースター](1973年 JESUS CHRIST, SUPERSTAR アメリカ 106分)音声解説版

 ノーマン・ジュイスン監督とジーザス役のテッド・ニーリー(撮影当時28歳)による2004年の音声解説版。監督は78歳、テッド・ニーリーはもう60歳になっているか。

 監督いわく、この主人公はジーザスのように見えるが、本当はユダであった、と。このユダ役をカール・アンダーソン(撮影当時26歳)が演じる。彼の国籍はアメリカ合衆国。しかし、「黒人」であった。この黒人ということで差別があったわけではないが、ただユダが黒人か、という点が一般には問題・話題となったらしい。

 監督は肌の色ではなく、最もふさわしい歌唱力と演技力を持った俳優をキャスティングしたのだと言っている。そしてこの映画の狂言回しであり、「裏切り者」であるユダをストーリーの中心に据えているわけだ。その方がジーザスという人間を見るのに、良い位置にあるからだ。名案だと思う。

 ただ彼カール・アンダーソンは2004年 2月23日に58歳で亡くなっており、テッド・ニーリーはその葬儀に参列したとのこと。それがこの音声解説の約一か月前のことという。なお[カラーパープル](1985)にも出演していたということなので、今度きちんと観てみたい。

 音声解説版であるから、撮影上の様々な苦労や事故なども紹介されている。撮影場所もメインはイスラエルであり、本物の古代ローマ時代からの遺跡を使っているとのこと。

 マリア役はイヴォンヌ・エリマン(撮影当時21歳)で、どう見ても日本人のように見えて仕方がなかった。監督は彼女のことを、日本人と中国人とアイルランド人を祖先に持つ、と紹介していた。日系アメリカ人、そういうことだった。

 撮影場所については、そのひどい暑さのためダンサーたちは、40秒踊ったらへとへとになっていたとのこと。すぐに水を飲んでの繰り返しで、何カットにも分けて撮影したとか。

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