見出し画像

【こんな映画でした】440.[オレンジと太陽]

2022年 4月27日 (水曜) [オレンジと太陽](2010年 ORANGES AND SUNSHINE イギリス 105分)

 ジム・ローチ監督作品。初めて。ケン・ローチ監督の息子とのこと。昨年三月に読んだ『ジェンダーで読む映画評/書評』(杉本貴代栄 学文社 2020年)の映画評に紹介されていた映画。なかなか手に入らず、ようやく観ることができた。

 なかなか凄まじい内容であった。英豪政府・キリスト教会・民間団体の三者が協力して、13万人にも及ぶ実質「児童人身売買」を児童移民ということで行っていた。19世紀から始まり、1970年まで続いていたとのこと。

 この映画は1987年からスタートするようだ。一人のソーシャルワーカーが気づいたことにより調査を始め、ついには国家による悪行を暴き出し、政府に謝罪(1993年)をさせるところまでの運動を実際に行ったマーガレット・ハンフリーズとその夫のことを描く。この映画が作られた頃も、その活動を今も続けているとのテロップがあった。

 原題の「オレンジと太陽」とは、オーストラリアという国家を指すものであった。暗く寒いイギリスからすれば、そこは天国のような楽園だというわけだろう。とんでもない。児童虐待が彼らを待っていたのだから。そしてその人身売買の利益は、一体どこの懐に入っていたのだろうか。英豪両政府の暗部を抉るものだ。

 したがってマーガレットは電話での脅迫のみならず、実際に家を襲われ、命を奪われかけるのだ。邪魔者は殺せ、というのは狩猟民族には当たり前のことなのかもしれない、と思うほどである。

 俳優はまずマーガレット役をエミリー・ワトソン(撮影当時42歳、最近観たのは[アンジェラの灰])、その夫をRichard Dillane(撮影当時45歳)。あとオーストラリアで一緒に行動するやはり児童移民の被害者であるレンをデヴィッド・ウェナム(撮影当時44歳)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?