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【こんな映画でした】801.[非情の罠]

2023年 2月 6日 (月曜) [非情の罠](1955年 KILLER'S KISS アメリカ 67分)

 スタンリー・キューブリック監督作品。撮影・編集も。3日間の出来事。「愛情と同情とを勘違いしないで」とグロリア(アイリーン・ケイン、撮影当時31歳)が、デイヴィー(ジャミー・スミス)に言っている。結局、彼らは愛し合っていたのかどうか、はっきりさせないままラストシーンはハッピーエンドにしてある。

 ボクシングのシーンは、ファイトが始まると観客は一切撮さないで、二人だけを撮っている。言い方を変えれば、観客なしで撮影していたということだ。しかしそのアングル・撮り方は新鮮であった。またラストシーンのマネキン置き場での死闘もなかなか面白い。

 原題の意味は、はじめは単に「殺人者の接吻」かと思っていた。しかし映画を観てみて、どうもシックリこない。そこで調べてみるとこの「KILLER」には「殺人犯、殺し屋、殺人鬼」はもちろんとして、「強烈なもの、素晴らしいもの、すごい奴、魅力的な女」であり、形容詞であれば「非常に良い、素晴らしい、すごい、死ぬほどおいしい、ものすごく魅力的な」ということになる。

 ということで「KILLER」には、「魅力的な女」(グロリア)と「殺人犯」(ボスであるラパロとデイヴィー)とを掛けてあるのかもしれない。

 なおグロリアという女性の生い立ちについて、本人がデイヴィーに話すシーンがあるが、かなり歪んだ家族関係であったようで、たしかにそれを聞けば同情してしまうのだが。一方、デイヴィーの方もボクシングの試合で負け、引退して田舎に帰ることを決意するにいたる状況にあった。つまり同病相憐れむ、といったことでもあった。

 ただそれでも彼女の真意・心がいずこにあったのかは、最後まで不明である。デイヴィー自身もオープニングシーンの独白で、騙されたような表現をしていたので。やはり男女間の愛情というものは、難しいものだ。

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