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【こんな映画でした】564.[美しき諍い女]

2020年 3月17日 (火曜) [美しき諍い女](1991年 THE BEAUTIFUL TROUBLEMAKER LA BELLE NOISEUSE フランス 238分)

 辻邦生の『美しい人生の階段 映画ノート'88~'92』(1993年)と『ヨーロッパを知る50の映画』(狩野良規 2014年)に紹介されていた映画。やはり難解か、私には。長いので何回かに分けて観る。分かる・分からないということで言えば、分からない。特に画家という人間の考え方は。それは人生観・価値観でもあるが、何より芸術観であろう。

 最後に出来上がった絵を、私たち観客には見せてくれない! しかも永遠に葬ろうというわけだ。その瞬間に下の方がチラッと見えるが、それは形は分からず色使いだけが、赤と分かるのみ。この絵を見ることができたのは画家を除いて三人だけ。しかもみんな女性。

 しかし私の思うに、おそらくこの絵はマリアンヌの全身像であった。顔もきちんと描かれた人物画。その描かれた顔を見てマリアンヌは、自分という人間の何たるかを突きつけられ、ある種の絶望を感じるのであろう。だから恋人ニコラとも、おそらく別れることに。それがラストシーン。

 ただ画商を呼び、出来上がった絵を披露するところでは、本当の渾身の絵ではなく、その夜、サッサと描き上げた裸婦の背中を描いたものをみんなに見せるのだ。そこにはモデルの顔は隠れて見えない。人物画・肖像画の怖さかもしれない。

 全編通して、黙々と画家がペンを画布の上に走らせるシーンが、長々と続けられる。もちろんモデルとなった裸婦マリアンヌをも映し出すのだが。音楽もストラヴィンスキーのものを挿入するだけで、特段に作曲されたものはないようだ。とまれ一度目であり、サッと流して観ただけなので、何が分かろうか、といったところ。

 監督はジャック・リヴェット。初見。[パリはわれらのもの](1961)をいずれ観ることになるかもしれない。画家のフレンホーフェルは、ミシェル・ピッコリ。これからその出演映画を観ることになるだろう。

 マリアンヌは、撮影当時25歳くらいのエマニュエル・ベアール。なかなかチャーミングである。もっとも私には、最初に登場するワンピースでの彼女の方が、裸婦のモデルの彼女より魅力的だ。この俳優の映画もこの先、観ることになるだろう。

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