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【こんな映画でした】791.[戦場のピアニスト]

2023年12月19日(火曜) [戦場のピアニスト](2002年 THE PIANIST フランス/ドイツ/ポーランド/イギリス 148分)

 ロマン・ポランスキー監督作品。エイドリアン・ブロディ主演、相手役女優にエミリア・フォックス。強烈なナチスのやり方を徹底的に糾弾するべく、その残酷さ・酷薄さをさらに強烈に描く。

 ランダムに10人ほどを路上に這いつくばらせて、その後頭部をピストルで順に撃っていくシーンもあった。[カティンの森]では、穴の前に立たせたまま前を向かせて、同様に後頭部を撃つシーンがあった。つまり、ドイツもソ連も同じやり方で射殺していたということだろうか。

 ユダヤ人だというだけで、あれほどの憎しみをナチスドイツだけではなく、彼らに侵略されたポーランド人たちまでもがなぜ思うのだろうか。主人公がうっかり皿を落として割ってしまい、その音を聞きつけたポーランド人女性が、ドアを開けろ、開けなければ警察を呼ぶ、と叫ぶシーンがある。

 もちろんユダヤ人を匿っているだけで、警察に捕まえられるという背景があるのだが。つまりポーランド人の中でも、ユダヤ人に同情的な人もいれば、我が身大事の人もいるということだ。これは人種の問題ではない。それぞれの個人の価値観の問題だろう。

 ユダヤ人がイエスの時代以降、ずっと差別され続けてきたという歴史の根の深さは、私たち東洋に住む人間には理解できないことだ。しかも、彼ら狩猟民族は、虐殺あるいは抹殺しようとまでするのだ。これは恐怖心に根ざすものなのか、はたまた憎悪に基づくものなのか。とまれ根本は、人間である。

 今、ガザではそのユダヤ人であるイスラエル国民とその軍隊が、パレスチナ人たちに対し虐殺行為をしつつあるのだ。つまりユダヤ人だからでもなく、パレスチナ人だからでもない。ひとえに同じ人間として、彼らの利害が切実に絡むとき、みんなそのような残虐な行動を取ることになるのだ。すべてではないにせよ。そしてそれらの根底には、一神教どうしの争いがあるということだろう。

 いずれにせよこの映画は、二度とは観たくないものだ。監督がポーランド人であることからくる、誇張もあるかもしれないが。ホロコーストの実態というのは、なかなか分からないものがあるようだ。

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