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【こんな映画でした】410.[みじかくも美しく燃え]

2023年 1月11日 (水曜) [みじかくも美しく燃え](1967年 ELVIRA MADIGAN スウェーデン 89分)

 ボー・ウィデルベルイ監督作品。エルヴィラをピア・デゲルマルク(撮影当時17歳、役柄は21歳)。スパーレ中尉をトミー・ベルグレン(撮影当時30歳、役柄では34歳)。

 原題はこの主人公の女性エルヴィラ・マディガンの名前。スウェーデンにおける実話で、彼らが心中したのは1889年とのこと。映画で描くのは、その最後の数カ月なのかもしれない。ともかく詳細の説明はない。おそらくこれを観るスウェーデンの人たちはみんな知っていたからであろう。

 残されているエルヴィラ・マリガンの写真を見ると、小顔でなかなか可愛らしい。男女間の愛情の一形態とはいえ、妻子ある身では無理がある。時代が変われば、と言わせているが、どう変わればなのだろうか。

 モーツァルトの音楽で有名な映画で、オープニングから3分ほどで流れ出す。ただ、意外だったのはこのメロディーラインがフルに使われてはいないのだ。つまり、言い方は悪いがブツ切りで何度も出てくるのだ。だからそのメロディーの美しさに浸ることを許してくれない感じなのだ。

 最初は違和感を感じたが、徐々にその意図が分かるような気がしてきたのだった。映像の自然、そして彼ら二人のある種の美しさとは裏腹に、現実の厳しさを表現しているのかもしれない。

 愛はあっても、お金が尽きれば、その愛の継続に問題が生じる。ここでもその通りであり、軍人であり伯爵という身分のスパーレ中尉に働いてお金を得ることなど不可能なのだ。「働けというのか」、と口げんかになっている。いよいよ経済的にも精神的にも逼迫してきている様が分かる。当初は、財布にあった紙幣もなくなり、小銭だけに。

 彼女は自分の持ち物を売り、彼は一度酒場でアームレスリングで勝って、酒とパンを獲得している。この酒とパンで最後の食事を森の中で摂り、彼らは心中していく。ピストルで。

 皮肉なことに何の仕事もできないスパーレ中尉だが、軍人なので人を殺すことだけはできるのだ。たださすがに彼女を至近距離で撃つことはできず、彼女が蝶を追いながら向こうへ行くところで撃つことに。彼女のストップモーションに銃声が二発響いて映画は終わる。

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