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【こんな映画でした】299.[チョコレート]

2021年 5月29日 (土曜) [チョコレート](2001年 MONSTER'S BALL アメリカ 113分)

 マーク・フォースター監督作品。レティシア役はハル・ベリー。撮影当時33歳、[ザ・コール [緊急通報指令室] ](2013年)に続き二本目。ハンク役はビリー・ボブ・ソーントン、撮影当時45歳。[狂っちゃいないぜ](1999)・[バンディッツ](2001)の2本を観ている。上手い。

 「MONSTER」には「残忍な人、非道な人、悪党」という意味がある。特典映像によると「MONSTER'S BALL」は17世紀のイギリスで使われていた言葉で、「処刑前夜に催されたパーティー」の意味だと監督は言っていた。

 現代的な濃厚なあからさまなセックスシーンがあるので18歳以下はダメとなっている。そしてそちらの表面的なところだけに着目すると映画の意味が取れなくなるだろう。いかにそれらのシーンが必然として重要なものか。

 最初に出てくるソニーのセックスシーンは、彼の孤独を象徴するものでもあろう。それは人間的な触れ合いというものでなく、一方的に性欲の処理だけを目的にしているかのようである。要するにソニーは女性との恋愛からセックスへ、とは行けないのかもしれない。その原因は母親と彼の家庭環境にあるようだ。

 その家庭環境とは、祖父・父・息子(自分)の三代、三人で暮らしているのだが、祖父の話で分かってくるのは彼らが女性とのまともな人間関係・愛情関係を持ち得なかった可能性である。祖父の妻はセックスを拒否し、最終的に自殺したようだ。また、黒人などマイノリティに対する偏見・差別が凄い。そして父親として絶対的な権限を行使しようとする。そのことにあとの二人は苦しめられる結果となっている。そのことに祖父は気付いてない。

 続いて父親のハンクも同じ女性に対して、ソニー同様のセックスを行おうとするシーンが出てくる。ここではその女性から「ソニーは元気?」と尋ねられ、意気阻喪してしまう。その時点でソニーは自殺していたのだ。このことから分かるのは、彼も妻を何らかの理由で失っていて性的に(精神的にも)満たされない日々の生活を送っていたということである。

 父親ハンクの価値観も、その父親(ソニーの祖父)譲りの差別的なものであった。三代にわたる刑務官の家系で、ハンクはその父親の言うとおりの生き方をしてきており、その息子ソニーにも強要する。しかし繊細な・より人間的なソニーはそれに耐えられない。ハンクは不肖の息子としてそれをなじる。

 その結末として、ソニーは死刑執行の際の不始末を父親から厳しく叱責され、ついにピストルを手にすることに。父親に銃口を向けながら、父は自分のことを憎んでいたろうが、自分は父を愛していたと最後に告白して自らの心臓を撃ち抜く。

 三つ目のハンクとレティシアとのセックスは、人間同士の真摯な愛情の求め合い・与え合いと言えるだろう。ハル・ベリーも特典映像で、このシーンは重要なものだったと言っている。その通りだろう。見ていて息苦しくなるほどの激しい愛の交わし合いは、それが彼らにとって必要かつ必然のものであったことを意味している。

 そしてラストは、ハッピーエンドということになる、とりあえずの、ではあるが。邦題はそのラストシーンでレティシアが食べたいといったアイスクリームのことであった。「チョコレート」のアイスクリーム。

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