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【こんな映画でした】432.[コラテラル・ダメージ]

2021年10月 6日 (水曜) [コラテラル・ダメージ](2001年 COLLATERAL DAMAGE アメリカ 109分)

 アンドリュー・デイヴィス監督作品。[逃亡者]を観たのを切っ掛けに。今作は私があまり観たことのないアーノルド・シュワルツェネッガー(撮影当時51歳)が主演。消防士役である。

 このテロの原因とされるのは、中米コロンビアへのアメリカ合衆国の介入である。コカインが関係しているようだが、ともかくアメリカの内政干渉、それも軍事行動を指すもののようである。それに対して独立を目指すゲリラたちが抵抗するという図式。

 もっともコロンビア国民からしたら、軍もゲリラもアメリカもすべて敵となるわけだ。下手にどこかに味方すると、たちまち命と財産を奪われることに。もちろんアメリカ合衆国だけが悪いとは言わない。それを利用するコロンビア国家における権力者たちの利権あさりもあるだろう。そこにつけこんでアメリカが支配しようとしているのは否定できない。そんな時の抵抗・反抗の手段として爆破テロがあるわけだ。

 この映画は、アメリカの恥部・汚点を糾弾する意味合いもないわけではない。もちろんそれを中心にすえたら観客が見に来ないだろう。そこが難しいところで、娯楽性を持たせながらも最低限の批判の目は失わない、といったところか。

 女優の出番は少ないが、ゲリラ指導者ウルフの妻役にフランチェスカ・ネリ。そしてその息子として子役の男の子が出ている。概していえば、やはりゲリラ側をやや悪く描いている。アメリカ軍(?)が村を空襲するシーンは、ベトナム戦争を想起させる。そのように無残なものであったろう。

 未公開シーンで、その虐殺のあとを描き出すところがあった。これは悲惨すぎるのでカットしたのだろう。あと消防士がゲリラの妻にやや籠絡されるようなシーンもあったが、それはやり過ぎなのでカットしている。

 原題は「巻き添え被害」、作中では「仕方のない犠牲」としていた。簡単に言うが、その現実はめちゃくちゃなものである。誰がそのように平然と客観的に論評できるだろうか。とまれB級映画にせよ、なかなかのものであった。もっとも「ロトントマト」では評論家は何と19%、オーディエンスでも27%である。酷評だ。やはりアメリカの恥部には触れてもらいたくないのだろう。

 メイキングによると、この映画自体はあの2001年の9.11以前に完成しており、公開は10月5日に予定されていたとのこと。もちろん公開延期となったわけだが。しかしこの9.11を画策した真の犯人たちにすれば、この映画は、つまりこの映画の題名は強烈な皮肉であったわけだ。ほくそ笑んでいたかもしれない。

 あのワールドセンタービルで失われた人命(消防士も含む)は、彼ら黒幕にとってはまさにこの「仕方のない犠牲」というわけなのだから。また監督はこの言葉を軍事用語だとも説明していた。戦争では損耗率というのをあらかじめ想定している。その上で作戦を立て、遂行していく。つまり戦死者は何人・何%、戦傷者も何人・何%といった具合に。残酷な話ではある。

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