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【アニメ産業調べ物5】「収益の低下と産業構造」②市場規模

少し空きましたが、次は「収益の低下と産業構造」の二回目、市場規模について。(これまでの記事は以下に纏めてあります)

こちらの前回の記事で、「アニメ産業がどんな形をしているか?」については全体像をイメージすることができました。

では、その枠組みはどれだけのサイズがあるのか。
市場規模で言えばどのくらいで、他と比較するとどうなのか?
というのが今回のテーマになります。

1.市場規模の定義ゆれ

市場規模とその比較、というのは実は正しく出すのが結構厄介な指標だったりもします。「どこまでがコンテンツ産業なのか?」「アニメ産業とは何か?」などなど。

例えば経産省のこちらの『コンテンツの世界市場・日本市場の概観』(令和2年2月)では、https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/202002_contentsmarket.pdf

>>2018年の日本のコンテンツ市場規模は約10.6 兆円。

となっています。
しかし以下の『デジタルコンテンツ白書2019』によれば、

>>2018年のコンテンツ産業の市場規模は12兆6,590億円、前年比101.3%と7年続けて穏やかな成長基調で推移し、ようやく12兆6,000億円を超えた。

と、約2兆円もの開きがあります。
これは別に片方が適当な調査をしたとかではなく、『コンテンツ産業』の区分をどこに置くか、という違いによるもの。しっかり定義して調べたからこそ生まれる統計の差です。

なので、せめて一つの団体が集計する統一された基準で「コンテンツ産業」「アニメ関連産業」「アニメ制作産業」の比較統計が見たいわけですが、これが意外と見つかりません。

『アニメ』を中心に調査する日本動画協会はコンテンツ産業全体を調べませんし、『コンテンツ産業』全体を俯瞰する調査ではアニメ関連産業とアニメ制作を分けて考えません。

経産省さん辺りが細分化された統計を作ってくれてそうな気もするんですが……あそこのコンテンツ産業課さんは毎年人が入れ替わるのか、資料のまとめ方や公示方法が色々あって探すのが大変だったりします。

なので今回は、ひとまず暫定的な比較を。(良い一覧資料持ってる方、情報提供下さればこちらに更新しますー)

2.アニメ関連産業の市場規模まとめ

コンテンツ産業全体では計れなくとも、「広義のアニメ産業」と「狭義のアニメ制作産業」の比較が行われている調査はいくつかあります。
これまで語った「アニメ業界の問題」とは「狭義のアニメ制作産業」の問題であり、これが最も重要な数字。それ以外にも意味はありますが、あくまで周辺環境です。

それらを示しているのが、先程も挙げた日本動画協会の調査。

(ただしこれ、サマリーであって本文は販売方式です。概略なのでご注意)

さて、2018年のアニメ関連産業の市場規模は約2兆1814億円。アニメ制作産業の売上高は約2671億円、というのがこちらの内容になります。

前述のコンテンツ産業全体の市場規模と合わせると、

2018年のアニメ関連市場の市場規模は
・日本のコンテンツ産業全体が約10.6 兆円~12兆6,590億円
・広義のアニメ関連産業が約2兆1814億円
狭義のアニメ制作産業の売上高が約2671億円

となります。
ついでに関連コンテンツ産業の項目をここから足すと(これ以降はさらに概算ですが)

『マンガ・アニメ・ゲームの市場比較 一番大きいのは?』
https://news.yahoo.co.jp/byline/kawamurameikou/20200814-00193032/

・マンガ市場は国内約5000億円
・ゲーム市場は約1兆8000億円(うちスマホゲームが約1兆3400億円)
となっています。

また、アニメ関連市場約2兆円のうち、
・商品化権が約5000億円
・遊興(パチンコ・パチスロ)が約3000億円
・テレビアニメが約1100億円
・劇場版アニメが約400億円
・Web配信が約600億円
・DVD販売が約600億円
とのことでした。(これらの数字から次の仮説を立てる際には、より厳密に典拠を当たっておきたいところ)

3.アニメ産業の市場規模から見えること

さて、ここまで概算レベルでのおおまかな市場規模を見てきましたが、それでもわかることもあります。比率です。アニメ産業はかつて子供向け玩具を中心としたグッズ販売を収益の柱としてきた歴史がありますが、商品化権が最大の市場規模を持っている辺り、その流れは今も残っている様子。

パチスロ化で勢いを盛り返して二期以降を製作したアニメ、というと『物語シリーズ』や『リゼロ』など少なくない数がありますが、3000億円規模。つまりすべてのアニメ制作会社が得る直接売り上げよりもパチスロ化の市場規模は大きいのです。色々と納得せざるを得ませんね。

さて、市場規模を調べたお陰で、アニメ関連産業におけるパワーバランスとでも言うべき収益額の比率が見えてきました。
その上で「狭義のアニメ制作産業」の収益状況を見ていくことで、全体の中でアニメ制作会社が置かれた経営環境を理解することができるはず。

次回に続きます。

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