[思い出話]母方の祖母と雛壇

3月3日は雛祭りです。
この日どうしても投稿したかった話があります。
私が小学生の時、母方の祖父母が引っ越しをするので、家族全員で手伝いに行く事になりました。
引っ越し先の家で、ダンボールから荷物を出したり、それを片付けたりする作業です。
引っ越し先は祖父の実家近くで、広い土地付きで二階建ての一軒家、家以外にも納屋だったり、畑だったり、裏口を出てすぐの所に、砂利の引かれた広い場所にゴミの焼却炉が置いてあるだけの場所など、とても広く遊び場には困りませんでした。しかも連休を利用しての引っ越しだった為、その日は泊まることが決まっていましたので、手伝いをそこそこに弟達と遊びながら、言われて手伝いをする感じでした。

そうして夜に、捨てる荷物をまとめている所で、大人たちがどうするかと相談をしていました。どんな相談だったか定かではありませんが、ゴミの処理方法だったと思います。
そんな捨てられる物の中に、ひときわ大きな存在感がある雛壇がありました。
たしか五段位のとても立派な物です。家にはそう言った物がなかった為、珍しくて見ていると母が、「これも捨てるんだって、もったいないよね」
それにすかさず祖母が、「じゃあ、あなたの所で引き取りなさいよ」
「無理よ、こんな大きなものどこにも置けない」
「じゃあ捨てるしかないじゃない」
そんなやり取りをしていました。雛壇の足元には、人形が入っているだろう箱も並べられており、私はおばあちゃんの家にこんなすごいものがあったんだな位にしか思っていませんでした。

明け方、いつもよりはるかに早く眠りから覚めました。
窓から見える外はまだ薄暗く、私以外の家族はみんな寝ています。
とても静かで、スズメの鳴き声しか聞こえないのですが、時折「パチン、パチン」とどこかで聞いたことのある音が聞こえてきます。
私はその音が一階から聞こえることに気づいて、興味本位で一階へと降りていきます、音がよく聞こえるようになり「コー、ゴー」と言う音も聞こえてきて、反射的にそれが火の音だと気づき、音のする方に駆けていきました。裏口の扉が開いており、そこから火の手が見えます。その時点で、燃えているのが外だと気づき、何故か私は落ち着きを取り戻し、裏口から外を見てみると、

ごうごうと燃える雛壇と雛人形たちが……



その圧倒的な光景に唖然としていると、火の傍にいた祖母が
「あら、もう起きたの? まだ明け方よ? 寝てていいのに」
炎をバックに何でもない様子の祖母、それが逆に怖い。
「これ」そういって、燃え上がる物を指さすと。
「そう、おひな様ね、昨日捨てるって言ってたやつよ」
普通に話す祖母に何も言えずにいると。
「さあ、もう大丈夫だからお部屋に入りましょ」
そう言って、私の肩に手を置き家に連れて行く祖母は、いつもの優しい祖母でした。

その後、自分がどう過ごしたのかよく覚えてないのですが、我が家では、母が子供の頃からある雛壇を、引っ越し後の新居で祖母が焼却処分したと伝説になっています。

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