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骨髄異形成症候群(MDS)

骨髄異形成症候群という病気がある。
骨髄で上手く血液が造られなくなり、場合によっては白血病に移行するという血液の病気だ。

今年の初め、実母が罹患した。
この病気には、原因なく発症するものと、抗がん剤治療や放射線治療の後発症するものがあって、やはり高齢者に多いらしい。

実母は5年ほど前に抗がん剤治療を受けたが、母に使われた抗がん剤は弱いもので、その時の主治医は「この薬でMDSを発症した人は今までいない」と言う。

根治するには白血病と同じく骨髄移植しかなく、母のような80代半ばの高齢者には無理な話である。
あとは病気の進行を遅らせる為の治療。
それでも今発症者が増えている事で、少しずつ新しい薬も開発されているらしい。

とりあえず今一番効果のあると言われているのが、ビターザと呼ばれる薬で、これを一週間毎日通院もしくは入院で点滴し、三週間休む。
そしてまた一週間の治療に入る。というのを一か月サイクルでひたすら続ける。

あくまで進行を遅らせる為のものなので、終わりがない。
高齢者には治療生活そのものが負担になる場合もある。

話を聞きながら、ものすごく複雑だった。
治らない病気が、そこここにあるのだという事。
それでも研究が進んでいる病気と、そうでない病気があるのだという事。
60過ぎで薬のひとつもない病気を受け入れた主人を看取った私は、80代で治らない病気になった母に同情する事が出来なかった。

そのビターザの治療を、母はやりたいと言う。
「だってそれしかないのにやらんなアカンやん」

何がアカンのか良く分からないけど、本人がやる気満々なのに水をさすのは流石に違うと思うので、母の気の済む方向で付き合う事にした。
病気の説明をしてくれた血液内科の先生にとっても、今ビターザ治療している患者さんの中で、母が最高齢だという。

よく母は「ややこしい病気になったもんや」「全然良い事無い」と愚痴る。
昔から割と“今”の事ばかりにとらわれる傾向があったけど、歳を取ってそれが更に顕著になった。


今のところ全然響かないけど、いつか伝わったらいいなと思う。

高齢になり、病気になっても、ちゃんと医者の話も聞けて、治療の話も出来て、今元気で家族とも話せている事って、ものすごく幸せな事じゃないのかな?

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