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花譜

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四季の花や植物との出会い。古道具と花、写真で綴る短いエッセイ。
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#モノクロ

秋のブーケ 私の花仕事

私が、もうかれこれ13年もの間、担当している花の仕事がある。 花の通販サイト『花問屋アソシエ』さんでの『花レシピ』の製作と撮影。『うきうき花レシピ』という、気分も揚る名前をいただいている。 毎月一回、季節の花の紹介とそれを使った作品を製作し、撮影する。 事前にデザインを決めて、花材を発注。 当日は丸一日かけて8作品程度製作しながら工程を撮影していく。 今年からは動画撮影も加わり、どうお見せしたらいいいか工夫しながら、スタッフ皆で試行錯誤しながら進めている。 特に、プロのカメ

今年のサクラ

ユーミンがポッドキャストの『うそラジオ』にて、『身近にある桜を自分の桜と決めて、毎年見つめ続け、自分とリンクさせるとまたいいですね』と語っていた。 確かに、『花見』と称して晴れやかにお出かけするのもいいけれど、日々の定点観測の方がより『去年の自分はこうだった、とかあの年は。。』と思いが深まるもの。 今年は、もう4月半ばかと勘違いするほど暖かく、関東でも北国の春のように一斉に春の花が咲き始め、やや戸惑いがち気分、気持ちが少し遅れてついていっている。 という訳でライカを持ち出す

秋風に身を任せて 秋明菊

昨日は、記事を書こうとPCへ向かったが、流石に台風による低気圧降下に押し潰されて無理だった。 ようやく和らいだところで、いよいよ秋の花の話をしようと思う。 秋の庭の草花で一番好きな花、といえば秋明菊。 ピンクもあるが、白がいい。 マットな白い花弁が秋風に揺れる様子は、眺めているだけで『ああ、やっと秋が来たな』と。 こちらは、横浜の『港の見える丘公園』にて、昨年モノクロフィルム撮影したもの。この公園の植栽は、いつもセンスがよく四季折々目を楽しませてくれる。 秋明菊について詳

モノクロフィルムで撮る初夏の花

初夏は、白い花が多い。特に木の花には白いものが多い。 モノクロフィルムで撮影する場合、花弁の厚さと色は、光の透過度で表されるが、『白い花』が一番その特徴を撮し出しやすいと思う。 だから、この季節はワクワクが止まらない。 本日の花の画像は、Leica M4 / DR-summicron / Kodak Tri-X 400 で撮影し、スキャンした画像。 5月初旬から時系列で追っていく。 まずは、エゴノキの花が紫陽花の葉に降り積もっていた。 山法師。 木の上の方に上向きに花をつ

晩春から初夏へ

この時期、木の芽時は何かと体調を崩しやすい。 子供の頃に至っては、入学式後に水疱瘡になり、学校の一泊遠足の夜から熱を出したり、病気が見つかって入院など、といいことがなかった。 昨年もめまいで辛かった。 今年はお陰様で比較的体調が良く過ごせている。 しかしなぜか葉桜の頃になると、なぜだか空っぽの気持ちになり、大丈夫かな、と思ったが、5月の連休前から日々の忙しさで体を休めるのに精一杯。以後いいのか悪いのか、何も考えられなくなった。 気がつけば、季節は変わって晩春から初夏。 楓

菜種の頃

あっという間に葉桜から楓も緑の葉を広げる季節になりました。 菜の花ももう菜種になる頃。 さて、こちらの写真は、数年前に撮った写真で、とある企業様の公式SNSで昨年春ご紹介いただいた写真です。 自分でも好きな写真ではありますが、今振り返ってみると、その頃は少し脚色した構図ですね。 そして、今年撮影した菜の花。 霞んだ水平線は皆様ご想像ください(笑)。 よりナチュラルな写真が自分の中でしっくりくるようになりました。 最近、SNSのアカウントで『だいぶ投稿の回数を減らしま

モノクロの桜

桜はそれだけ誰にとっても忘れられない花。 特に日本人にとって、この季節の過去の記憶と結びつくことが多いからだと思う。 私は、歴史ある小学校の校庭で、桜が散り始める4月、思いっきり花吹雪の下で漕いだブランコのことが今も忘れられない。 そのブランコは、休み時間には走って行かなくてはいけない程、人気だった。 あれ以上、素敵な桜には多分もう会えないと思う。 大人になった今では、あの頃の透明な気持ちは何処かへ忘れ、毎年段々複雑になる気持ちを抱えて写真を撮っている自分がいる。 先日

偶然の失敗を愉しむ

朝ボーッとしていて、フィルム交換しようとカメラにフイルムが入ったまま、裏蓋を開けてしまい、立ち直れないショックだった件は、先日お話ししました。 その現象が戻ってきました。 『おお、割とまともに現像できていそう。』 蓋を開けていたのは、わずか2秒くらいだったので、フィルムロールの中心に近い部分はほぼ大丈夫でした。 私が主に被写体としている生きている花を撮る場合は、自然風景写真やstreet-photoと同じで(大体において写真とはそういうものですが)蕾から開花、枯れるまで

椿

椿、微笑む。

色彩のない季節を撮る

写真で季節、時間の流れを表現する場合、光の強さや弱さ、柔らかさ硬さなどの要素は欠かせないと思う。 私は、デジタルカラーで室内で花を撮影するときも間接照明は使わない。その季節には、その季節なりの光の要素を持っていて、季節の花はその光の下で生かしたいと思っているから。 特にモノクロになると、色彩の要素がなくなった分、そこが現れているかどうかが、後々自分のお気に入りの一枚になるかどうかの判断基準としている。 今日は、彩りの少ない2月の季節写真をいくつかご紹介。 2月の夕暮れ

シュールな黒い花

私は、白い花が好きだ。 年間を通じて多く撮影している。 特に花弁が透けるような白い花。 それは、逆光で撮るとその質感がよく見えてくる。 堅そうな花弁なのか、今にも壊れそうな花弁なのか。 触れてみたいと思わせる。 では、黒い花。 厳密に言うと真っ黒な花はない。 大体が黒に近い濃い茶色か濃い紫。 撮影すると大抵黒潰れする。古いフィルムカメラだと特に調整不能。 輪郭しか残らず、なんだかわからなくなる。 でもあえて撮ったままにしておく。 ちょっとシュールで、惹かれてしまうから。