長女スペック

一昨日、祖父の命日だった。仏壇を拝むための箱菓子を買いに、母に付き添った。和洋菓子とパン屋、珈琲スタンドを備えたお店だった。

日持ちのする洋焼き菓子を詰め合わせにする。母は売り場から適当に選んで籠へお菓子を入れる。祖母は糖尿病だ。だがらお菓子や果物は大抵、お客様用か、私達が持ち帰ることになる可能性が高い。

「パウンドケーキは？」

もっとも祖母は食べるのが好きだから全く節制していないと言う。

「あんた自分の好みで選んでるじゃない」

と、母は答えた。

まあ、そうだけど。そう言ってぽんぽんとお菓子を選んでいる母は、普段から人の好みを自然と掬い上げているのか。

わたしは妹と違って友人と遊ぶ約束もバイトもないから、よく子供の頃から贈答用のお菓子を買うのについてこさせられた。お陰で市内のお菓子屋のデータが染み付いてる。文明堂や資生堂、中村屋、メリーチョコレート、コージーコーナーは何処にあって、TPOごとに買い分けも出来る。地元密着のお菓子屋も、個人のケーキ屋も、フリーペーパーを見ると和菓子屋やケーキ屋の広告をついチェックしてしまう。

母の籠を見ると、さっきのパウンドケーキが入っていた。オレンジ入り。私は、紅茶入りをもう一度薦めてみた。

「えー、お母さん紅茶嫌い」

………あんたも自分の好みで選んでるし。