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「小さな自分」を大切に〜ウェルビーイングを高めるささやかな方法

もし宇宙から地球を見ることができたら、どんなに心震えるだろう——。天体望遠鏡を買ってもらった小学生の私はそんなことばかり考えて、実家のベランダから月のクレーターや土星の輪を飽きず眺めていた。それから数十年。今生では、宇宙飛行士になれそうにもないけれど。

本記事のカバーに使っている写真「地球の出(Earthrise)」は、1968年にアポロ8号の宇宙飛行士ウィリアム・アンダースが撮影した地球の写真。「史上最も影響力のあった環境写真」として知られている。この写真を見るだけでもなんだか敬虔な気持ちになる。

さて、先日『The Atlantic』が、「畏敬の念」を感じることが、人々にとって精神的な満足感や幸福感=ウェルビーイングをもたらすことができるかもしれないという記事を掲載し、気になったので、これまで私が考えてきたことと合わせて書いておこうと思う。

記事では、「The Small Self Effect(「小さな自分」効果)」=自分自身の存在や自己中心的な思考から解放されることで、視野を広げ、気分を改善するという概念について紹介している。どうやって解放されるのか? その鍵を握る言葉が「畏敬の念」だ。

ここからはこれまで私がメモしていた内容。

アポロ計画に参加した宇宙飛行士たちが、宇宙や宇宙空間から見た地球の美しさや神秘性に畏敬の念を感じ、自己の存在や人間社会に対する新たな認識や洞察力を得たことを「概観効果(overview effect)」と言う。

概観効果によって、人間は自分たちが住む地球が宇宙空間から見るととても小さく、かけがえのない存在であることを再認識する。また、概観効果によって得た洞察や認識は、自己の存在や生き方、人類全体の未来についての考え方を変え、幸福感や意義のある人生を追求する上での重要な要素になり得るという。つまり、人間のウェルビーイングに良い影響を与えることができる可能性があるというのだ。

この概観効果によって生じる「畏敬の念」については、多数の研究論文がある。例えば、この論文では、畏敬の念とは、大自然や芸術作品など、自分自身よりも大きな存在や力に接することで感じる深い感動のことを指し、道徳的・霊的・美的な感情であるという仮説を提唱。この感情が謙虚さや協力性を促すことから、人々の社会的支援やつながりを促進するという可能性があることを指摘している。

畏敬の念を感じることによる「The Small Self Effect(「小さな自分」効果)」は、何も宇宙飛行士にならなければ得られない感情ではない。たとえば自然の風景を見たり、美術館を訪れる、宇宙や深海の映像や写真を観る、高い建物や広大な景色を眺める——こういったことで引き起こされることが知られている。

自分がちっぽけだなあと感じることがウェルビーイングを高めることになるなんて! なんだか思考がくるりとひっくり返るような発見だったので、ご紹介したいと思って今回の記事を書いてみた。

「海のバカヤロー!!」にも「青春」以外に大きな意味があったってことですね。

これからはちょっとだけ意識的に、海や山に出かけるでも、自然が身近になければ美術館に行っても、宇宙や広い景色の写真を眺めるでもいい。都会で高い建物を見るでもいい。「ちっぽけな自分」を大いに感じてみようなありませんか。

追記:
ちなみにChatGPTに「The Small Self Effect(「小さな自分」効果)」を得る方法は? と聞いたところ以下のような方法もあるとのこと。これなら自宅でもできますね。

身体を小さくするポーズを取る(例:背中を丸める、膝を抱える)
ペットや赤ちゃんと触れ合う
身の回りを整理整頓する
自分に対して優しく接する(例:自分に対して褒め言葉をかける)
自然の中で散歩する
マッサージや入浴をする
ゆっくりと深呼吸する

Cover photo : NASA by Unsplash

おまけ:「The Small Self Effect(「小さな自分」効果)」を感じるためのおすすめ本を紹介されたので置いておきますね。


英語版だったらkindle版が買えます。

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