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【ショートショート】放課後ランプ

気がつくと、放課後だった。
「ん、あれ……。寝ちゃってたのか」
突っ伏していた机から体を起こす。
教室には自分以外は誰もおらず、窓の外からはどこかの運動部の掛け声が聞こえてくる。
「まだ、帰りたくないな……」
教室を出ると玄関には向かわずに廊下を辿って別の部屋の扉を開ける。
「あら、今日は遅かったのね」
白衣を羽織った先生が椅子ごとこちらを振り向いた。ポッと灯ったランプのようなその表情に私は安堵する。
「今日も少し休んで行ってもいいですか」
私のお願いに微笑みながら頷くと、先生はベッドを囲むカーテンを開けた。
ベッドに横になりゆっくりと目を閉じたところで唐突に気がついた。

ああそうか。これは夢だ。
家庭に問題を抱えていて、放課後は決まって保健室に休みに行っていたときの、その記憶。

私は意識を取り戻す。

窓の外から聞こえてくるのは、賑やかな子どもたちの声。きっと、今度は私の番なのだろう。
職場である保健室をゆっくりと見回して、改めてそう思った。



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