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【ショートショート】立てこもり

 学校の保健室に男が立てこもってから既に12時間以上が経過していた。担当の鈴木刑事は苛ついた様子で鋼鉄製のシャッターで閉ざされた保健室を見つめている。
「一体どうなってるんだあの保健室。機動隊が突入を試みてもまったく歯が立たないぞ」
 鈴木刑事の言葉に、彼の部下の松本刑事が答える。
「校長に聞いてみましたらアメリカ製でむちゃくちゃ頑丈に出来ているみたいで、生徒の安全のために奮発して設置したらしいです。メーカーに問い合わせたところ、今みたいに全部のシャッターが閉まったら内からも外からも絶対に開けられないと誇らしげに言ってました」
「全く厄介な。人質がいないのが不幸中の幸いだな」
「そうですね。しかしこれではどうしようもありません」
 半ばあきらめたような松本刑事の言葉を聞きながら、鈴木刑事はふとある事に気がついた。
「あの保健室、一度シャッターが閉まったら絶対に開けられないんだよな」
「ええ、そうですね。それが売りらしいですから」
「じゃあもう、犯人は捕まっているのと同じなんじゃないか?」
「……あれ?」



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