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非日常はすぐそこに

サービスエリアの食事が好きだ。それも深夜の食事。

サービスエリアといっても今流行りの大規模な、それこそサービスエリアだけで数時間過ごせるような華やかでおしゃれなところではなくて、言い方は悪いけど、古くてちょっとうらぶれたようなサービスエリアが良い。

メニューもオリジナリティ溢れるご当地メニュー!といったものではなくて、醬油ラーメンとか、カレーとか、からあげ定食とか、どこにでもあるようなやつ。

そんなメニュー、例えば醤油ラーメンとかを頼んで、天井からぶら下がった台に乗ったブラウン管(!)のテレビから深夜のバラエティ番組が流れているなか、周りにいるのは休憩中のトラック運転手の人だけ、みたいなシチュエーションで黙々とラーメンを啜る。

味だって別に格別おいしい訳でもなくて、もしかしてこれ気合の入ったコンビニメニューとかの方がおいしいんじゃないか、というようなありふれたやつ。20年前からこの味だったんじゃない?というようなやつでいいんだ。

そんなシチュエーションが不思議と好きなのだ。
周りに人がいないわけではないのに、なぜか孤独を感じる。「もののあわれ」ってこういうことを言うんじゃないか、って思ったりもする。

よく分からない安っぽいおもちゃとか、演歌歌手のカセットテープとか、
それに都内でもないのに東京土産が並べてある分類不能な売店を、もちろん深夜だから営業していないのも分かっているのに、トイレに行くついでに意味もなく覗いたりしてみたりする。
ただそれだけなのになぜか楽しくなってくるのだ。

大規模なサービスエリアでも深夜に食事をしたことはあるけど、なぜかそこだと「ただただほとんどの店が閉まっているだけ」としか感じられなかった。

世の中の大半が寝静まっている中、ここだけポツンと取り残されたようにこっそりと活動している。
この世の中の常識から外れたようなこっそり感がいいのかもしれない。
まるで子供の時に親に隠れて夜中まで起きていたときのような、どこか背徳的でわくわくしたあの感じ。

そこまで考えてふと気が付いた。もしかしたら旅をしている気分になるからかもしれない。
あてのない旅。一人旅。誰にも縛られることなく、どこでも行きたい所に行ける非日常の時空間。

探してみれば非日常はすぐそこにあるのだ。そう、例えば深夜のサービスエリアとかにも。

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