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心の傷は治らない

短い動画だけど、外国人の母親が一枚の紙を持って、二人の子供たちに「この紙に対して悪口を言ってみて」というものがあった。
子供たちは紙に向かって口々に「バカ」「ブス」「臭い」みたいな悪口を言い放つ。一つ悪口が放たれるたびに母親は紙を手でクシャッと握っていく。
紙がクシャクシャに丸まったところで母親は「じゃあ今度はこの紙に謝って」と子供に伝える。子供たちは「ごめんね」「悪かったね」みたいな感じで紙に謝る。謝るたびに母親は紙を広げていく。ただ、広げられた紙はクシャクシャの皺が残ったまま。
母親は子供たちに問う。「この紙はあなた達が謝ったことで元に戻ったかしら?」子供たちは答える。「ノー!」
最後に母親は子供たちにこう諭す。「心の傷は謝ったとしても元には戻らないの。皺はついたまま。だから他人を傷つけるような言葉を軽々しく言っちゃダメなのよ」

やや脚色したけど、こんな感じの動画だった。
この一度皺くちゃになった紙は元のまっさらな紙には戻らないってのは、事実だと私は感じた。謝られたところでもう手遅れなのだ。むしろウザい。

岡田斗司夫氏が人生相談でこういう回答をしていた。
相談者「私はかつていじめっ子でした。二十歳をすぎましたが、今でもたまに当時のことを思い出します。いじめ被害者のことはよく取り上げられますが、いじめ加害者のことはあまり取り上げられません。私は罪悪感が消えません。私は幸せになっていいのでしょうか」
岡田氏「この先、あなたがいじめ加害者であったということは誰にも決して話さないで下さい。話が広がってしまわないようにして下さい。いじめ被害者のなかには色んな人がいます。ずっと当時のことを忘れられない人も。もしかすると中には復讐をしようと思っている人も」*うろ覚えな点あり

ポピュラーな返答をしない岡田氏。確かに現実的だと思った。いじめ被害者である私から見ると「誰にも言わずに墓まで持って行け。震えて眠れ」と聞こえましたけど。

子供の心は柔らかく、傷つきやすい。経験値も少なく、対処法も知らないし、周囲に相談する術もない。
相談できる親や大人、逃げ込める自分の部屋、登校拒否を許される家庭環境があるのは、まだまだ幸福だと思う。
それらの選択肢があるのなら、十分活用してほしい。それは敗北ではなく、生きるための知恵なのだから。

いじめ加害者、いじめ教師、毒親の包囲網に囲まれて、この世のどこにも逃げ隠れできる場所がないと、死に場所を探し続けていた身としては、スマホが一台あれば救いを探せる現代を、少し羨ましく思ったりする。もちろん、そのインターネットによって殺されていく人も残念ながら存在するのだが。

心の傷は治らない。しかし因果応報という言葉もある。人を呪わば穴二つだ。許すことは出来なくとも、その記憶から距離を置くことは出来る。他の場所に楽しさを見出すことは出来る。
私もまた心に閉じ込めた憎しみを墓まで持って行く。時々ふいに思い出して怒りに震えて眠りながら。

さあ。楽しいことをしよう。それが生き延びた自分への褒美だ。


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