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アルコール依存症③ ARP

さて、一週間の解毒期間を経て、ARP(アルコールリハビリテーションプログラム)に入ります。
今はもう使ってないと思いますが、少し前までは以下の本を読む学習会がありました。とても分かりやすい本で高齢者の方でもスルッと頭に入ると思います。基本の教科書って感じですね。

入院するとアルコール専用病棟に入ります。とはいえ地方の病院。アルコール依存症患者さんだけで病棟は埋まらないので、残りの病室には一般の精神疾患患者さん(精神分裂症や認知症)もいます。

入院すると分厚いファイルを手渡され(ARPのマニュアル)断酒宣言書を提出してもらい、一週間のカリキュラムが伝えられます。面談もあります。
教育の場であり、治療の場です。

認知行動療法もあります。ビデオ学習も。断酒会に参加している外来患者さんとの交流会。医師による学習会。栄養指導。体力づくりのための運動。夜は地域の断酒会への参加。

入院期間によって、外出や外泊もあります。試験外泊ってやつで、患者さんにとっては誘惑だらけでしょう。
帰院したらアルコールチェッカーで飲酒していないか調べられます。
たまに(よく)際どい数値が出ますが、そこでガミガミ言いません(わたしは)「一回、うがいをしてきてくださーい」と言って、ちょっとしてから測りなおします。するとたいていOKになります。
飲酒した場合の一番のペナルティはその後の離脱症状でしょう。本人が自分で尻拭いをしなければならないのです。
厳しく言う時と、わざとスルーして観察する。上手く使い分けないと患者さんは潰れます。

一時期などは入院前から大きな不満を抱えていた患者さんによってARPが成り立たなくなったことがありました。行ってみれば暴動、脅迫です。
言葉での激しい暴力、反発、先導。
これもまた治療の一環ですが、真向から暴言を受けたスタッフはたまったもんじゃないです。こういう時、権力のあるドクターには怒りが向かないので、病棟の問題として処理しました。全くもって頼りにならないドクターでしたね。中心になったARPをしていたスタッフが心身疲労で長期休暇に入ってしまうほどのダメージでした。


アルコール依存症は脳の病気で、身体にも様々な弊害を伴います。
一か月に一度の血液検査、毎日の検温。身体チェック、治療も並行して行います。

アルコールが抜けると、イライラや神経過敏、不眠、頭痛・吐き気、下痢、手の震え、発汗、頻脈・動悸などの離脱症状が出ます。

肝炎や脂肪肝、膵炎などの疾患や、生活習慣病、消化器系のがんなどの背景にアルコール依存症がある場合があります。
世界保健機関(WHO)によると、アルコール依存症は60以上もの病気や外傷の原因になると指摘されています。

抗酒剤などについてはリンク先を。

個人的見解ですけど、アルコール依存症には「断酒」です。「減酒」を言う人もいますが、それは無理というものです。適度の飲酒が出来なかったから、身体もこころもボロボロになっているんです。減酒が出来るくらいの人は依存症ではないのでしょう。

余談を。

外泊から患者さんが二名帰ってきた時のことです。
最初の患者さんがアルコールチェッカーで調べて、無事にOK。
次の患者さんはなぜか警告音。しかし患者さんからお酒の匂いはしません。
あれー? と思ったら、他のスタッフが気をきかせたつもりで、アルコール綿花でチェッカーを消毒していたんです。
「そりゃあ、あかんわー!」って患者さんに平謝り! 無事にOKになったということがありました。
いやはや。ヤバイところでした。すごい頑張って飲まない努力をしているのに、こんなことで疑われたらね……。


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