わたし、この文章好きなんですよね。角川文庫の巻末にある発刊の辞なんだけど。読んだことある人は多いと思う。昔の文章なのでちょっと硬いんだけど、32歳の人物の文章とは。昔の32歳って凄いね。知ってるって人も多いだろうけど載せとく。
「西洋近代文化の摂取にとって、明治以後八十年の歳月は決して短かすぎたとは言えない。にもかかわらず、近代文化の伝統を確立し、自由な批判と柔軟な良識に富む文化層として自らを形成することに私たちは失敗して来た。そしてこれは、各層への文化の普及滲透を任務とする出版人の責任でもあった。」
とか、
「これは大きな不幸ではあるが、反面、これまでの混沌・未熟・歪曲の中にあった我が国の文化に秩序と確たる基礎を齎(もた)らすためには絶好の機会でもある。」
とかね。けっこう好きな部分。
混沌、未熟、歪曲のなかにあった文化か……。これって過去形じゃないよね。まるっきり現在進行形だ。
角川さんにはこの所信表明を忘れないでほしいと思ってるよ。