時間を巻き戻す方法
時間を巻き戻したいと思ったことはないか?
博打で負けた時、振られたとき、好きだった人が結婚した時、博打で負けた時
考えれば後悔と悔しさにまみれる生活だった。呪ってやる。
俺は不思議な体験をした。
あれは肝臓をわざわざアルコールに浸したような男だった。
男はもうすぐ死ぬようだった。
酒におぼれるより女におぼれた方が俺としてはかっこいいと思ったが男は金も家族も酒も手に入れていた。そして酒に殺されそうになっていた。
健康な人から見たらなんて不幸な人だと思うだろうが、精いっぱいの抵抗を続けてきたレジスタンスの一員である俺からするとなんてかっこいい死に方だとある種の尊敬をもっていた。
酒におぼれると人はいろんなところがダメになるようで腹に水が溜まり胸にも水がたまるようにもなる。二日酔いは脱水症の一種だという。つまり水を抜いたら脱水症を起こして苦しむ。水を抜かなきゃ痛みで苦しむ。二律背反。
家族から連絡があった。男の様態が急変したらしい。
俺は大田区から練馬まで戦闘機のような速さで駆け付けた。
しかし着いたときには男は最後の呼吸をした後、息を引き取った。
地位を持ち、家庭を持ち、酒にたどり着いた男のあっけない最期を見た。
その日、俺は人生で一番強い金縛りにあった。
何かに乗られている感覚。首が閉まるかのような閉塞感。
ハイになった俺はコルトM1911を手に持ち近づいたら殺すと霊を脅した。
その時、時間がゆっくりと進んだ。
俺は時間を操るステージに立てたのだ。
時間を戻す方法はあの世とリンクをつなげることだ。
だが、あまりの金縛りの多さに俺は看護師兼霊媒師の60代の女性に祓ってもらった。
ひどい霊に憑かれたね。触ったときヒヤッとした。あの人の代わりにどんどん酒を飲んで供養してやりなさい。
俺は酒場でマザーファッカーと罵りながら酒を飲んだ。酒はうまかった。いつ飲んでもうまい。特にサッポロ赤ラベル。
※この話は事実です
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?