共テ英語RにおけるScanningおよびSkimming問題について
今年度は高校3年生の授業を担当しているので、時折共通テストの問題演習を行います。演習(リーディング)を行う中で、生徒の様子、また自分自身が予習で解いている実感からも、時間内にこれだけの分量を読んで解答するのは至難の業であると感じます。
共通テストのリーディング問題がこのような形式になっているのは、精読一辺倒ではなく、scanningやskimmingなどの速読も取り入れ、目的に合わせた多様な読み方を求めているからだと思われます。情報検索問題(私は「ウォーリーを探せ問題」と呼んでいます)など、「こんなの英語の力を測っていない!」などと批判されることも多い共通テストの問題ではありますが、実生活の中では確かにscanningやskimmingといった能力が求められる状況はあります。
実生活におけるscanningの例
私は、郵便物の整理が得意ではありません。ファイルボックスの中に入れて、ずっと放置してしまいます。先日思い立って、数年ぶりに郵便物の整理をしました。ファイルボックスの中身をすべて出して、ほとんどは不要なものなのですが、捨ててはいけないものが混ざっているといけないから、一通り目を通します。
なにしろ数年ぶりの整理なので、例えば毎年送られてくる保険のレポートのようなものが溜まりに溜まっています。毎年送られてくるものですから、一番新しいものだけ保管しておいて、過年度のものは処分していいはずです。一通り封を切って中身を確認し、毎年送られてくるレポートであることを確認したら、日付だけ見て、2,3年前のものであれば処分してよいと判断できます。
また、様々なクーポンやイベント事の案内もたくさんありますが、これも期限切れだったりイベントが終了しているものばかりで、それらは日付を見た瞬間にゴミ箱行きと判断できます。(困るのが、日付だけで年度が書いていないもの。今年の6月なのか去年以前の6月なのか、判断ができません…。もちろん全て捨てることにはしましたが。)
このような作業をしながら、これがscanningだなーとぼんやり考えていました。日付だけを探し、捨てていいかどうかを判断する。確かにscanningは実生活の中で活用されています。
実生活におけるskimmingの例
上記はscanningの実例ですが、実生活でskimmingを使うこともあります。先日、英作文の指導について自らをアップデートしようと、4冊の英作文に関する書籍を購入しました。4冊すべてをじっくり読もうとしたら相当の時間がかかりますが、ページをペラペラめくりながら、自分にとって新しい有益な情報となる部分にだけ付箋を貼っていきました。このようにザっと目を通して概要を理解していくことをskimmingと呼ぶのだと理解しています。
目的ありき
このように、scanningやskimmingといったスキルは、確かに実生活の中で使用されています。この2つに共通していることは、どちらも「目的ありき」だということです。上記の私の例で言えば、scanningの例では「日付を見て、捨てていいかどうかを瞬間的に判断する」という目的、またskimmingの例では「ざっと目を通して有益な情報が書かれているかを判断する」という目的がありました。こうした明確な目的があるからscanningやskimmingというスキルを使うことになるわけで、決して「今からscanning/skimmingをしてください」と指示されてするようなものではありません。
その観点から言うと、せめて本文よりも設問を先に印字していて欲しいものです。もちろん共通テストリーディングを受験する多くの受験生は、設問から先に目を通すように準備をしていることでしょう。しかし、受験上のテクニックとして設問を先読みするのと、問題の構成としてあらかじめ問い(読む目的)を与えておいてから本文を提示するのでは、その問題が伝えるメッセージは大きく異なるのではないでしょうか。
このことは奇しくも、過去の投稿でリスニングについて書いた主張と似通ったものとなります。私自身、このことにこだわりが強いのかもしれません。
共通テストで必要なのか
さて、scanningやskimmingといった読み方について、主に「目的」という観点から書いてきましたが、こう考えてみると、やはりこれを大学入学希望者共通テストで問う必要があるのか、という身も蓋もない疑問が湧き上がってきます。少なくとも、「ウォーリーを探せ問題」(情報検索問題)でscannning力を問うことの妥当性は、大学で学問を修めることを希望する者を対象としたテストで測る必要はあるのでしょうか。
英語教育におけるリーディング指導として、ボトムアップの一文一文の読解だけでなく、トップダウン方略も含めて様々な読み方を指導すべきというのはその通りと考えています。それを前提とすれば、大学入試の波及効果を考えたとき、入試でもこうしたスキルを問わなければならない、という理屈も分かります。それでも、「ウォーリーを探せ」だけは・・・疑問が残ってしまうのです。
時間制限を設けてはどうか
「ウォーリーを探せ問題」のもう一つの問題は、正解できるかどうかよりもどれだけ時間をかけずに解答するか、というものになってしまっていることだと思っています。情報検索問題に時間をかけすぎてしまった場合、後の大問にかけられる時間が足りなくなってしまいます。それを含めての「テスト」である、と言ってしまえばそれまでですが、「時間配分」の能力が点数に大きく影響してしまうというのは、test-taking skillsを測定しているということにもなりかねません。
であるならば、せめてscanning問題の成否(時間をかけずに解答できたか)が他の大問に影響しないよう、scanning問題だけは時間設定を別にするべきではないでしょうか。
GTECのリーディング問題では、そのように問題ごとに時間を区切っていたと記憶しています(最近見ていないので、現在もその形式なのか分かりませんが)。GTEC(学校で実施するアセスメント版)では、リーディング問題の時もCDで音声を流して、細かく大問ごとの解答時間を設定、指示していました。
共通テストの規模では、運営上それは難しいのでしょうか。リーディング問題でも音声指示に従って、という形式が取れれば、上記で紹介した過去記事でも述べたように、ゆくゆくはリスニングとリーディングの融合問題という可能性も出てくると思います。そのような共通テスト英語問題のあり方は、検討されていないものでしょうか。
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