AIでrewriteした英文で読解方略指導を①

現在高校1年生の授業で使っている教科書は、生徒にとってやや難しめの文章となっています。新出語句も多く文構造も複雑なところが多いため、生徒たちは読み進めるのに苦労しています。

英語教育においては様々なところで、生徒にとって易しめのテキストを扱うべきという話がなされます。私も基本的にはその考え方に賛成していますが、本校英語科では様々な観点から総合的に判断し、高1のテキストでは難しめのものを採用しています。

生徒たちは難しい教科書でモチベーション高く取り組んでくれています。苦労しながらも一文一文丁寧に読んでいく体力がだいぶついてきたと感じますし、語彙力もそれなりについてきたようです。

英文難易度と読解方略

先日、ある研究会で英文難易度と読解方略について興味深い指摘に出会いました。学習者の読解ストラテジー使用は、学習者の読解力によって変わるのではなく、英文テキストの難易度によって左右される可能性がある、との指摘でした。(前田&圓谷, 2022)

一般的には、読解力の乏しい学習者ほど一語一語、一文一文のボトムアップの読み方に終始してしまい、読解力の高い学習者は未知語の推測や段落構成に目を向けながらのトップダウン方略を利用しながら読むことができるとされます。

一方、この研究では、ボトムアップ・トップダウンといった読解方略の使用は、学習者のレベルによって変化するというよりも、同じ学習者でも英文テキストの難易度によって使用する読解方略が変わるという可能性が指摘されています。

まだ決定的な研究結果ではないようですが、その考え方には一理あると思わされます。もしもそうだとすれば、読解方略の指導においては様々な難易度の英文を組み合わせて使用することが効果的かもしれません。

難しい教科書で読解方略をどう指導するか

冒頭で述べたように、私の授業で扱っている教科書が難しいため、生徒は一文一文丁寧に、ボトムアップで読んでいくのに終始しがちです。なるべくそれだけにならないよう、最初に読むとき(1st reading時)には概要を捉えるreading questionsを与えたりしていますが、英文が難しいので限界があります。また未知語への対処(推測など)に関しては、そもそも未知語が多すぎるために、この教科書英文を使って未知語の推測をトレーニングすることは不可能となっています。

前田&圓谷(2022)の指摘にあたって、今の授業では読解方略の指導が不十分であることを改めて自覚しました。目の前の高難度の教科書を使いながら、どうすればトップダウンの読解方略を指導することができるか。これが自分にとって大きな課題となりました。

一つの可能性として思いついたのは、教科書の英文を易しく書き換えて(rewriteして)使ってみるということです。1st reading時にはrewriteした易しめの英文を読ませることで概要をつかんだり未知語の推測等のトップダウン方略を使って読ませ、その後本来の高難度の教科書を読ませるというステップを踏むのはどうでしょうか。

ここ最近のChatGPTなどのgenerative AIの台頭により、英文のrewriteにかかる手間が激減しています。この状況であれば、うまくAI技術なども使いながら英文をrewriteすることで、難しい教科書を採用しながらも読解方略の指導ができるのではないでしょうか

次回の投稿では、実際にChatGPTを使ってrewriteした方法をご紹介したいと思います。

(参考文献)
前田哲宏 & 圓谷幸三郎 (2022) 「英文難易度と読解力からみた読解ストラテジー使用の違いに関する調査 ー読解ストラテジー使用の通説再検討ー」 英語授業研究学会紀要 第31号


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