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U-23チームのジレンマ ―セレッソ大阪U-23の4年目を振り返ってみた―

16勝4分14敗、勝ち点52で6位。
セレッソ大阪U-23史上最高の成績を残した2019年。

しかしながら本来のU-23の目的はトップチームへの選手供給にあります。
トップの試合(J1・ルヴァン・天皇杯)に出場したU-23枠内の選手は6人。内訳としては、

西川 潤 3試合61分
瀬古 歩夢 22試合1,925分
山田 寛人 5試合119分
安藤 瑞季 1試合39分
舩木 翔 14試合1,166分
西本 雅崇 4試合45分
※データはSoccer D.B.より。

これを見てトップに選手を供給できたかと言えば、あまりできていないと感じます。
U-23枠内でのトップ最多出場となった瀬古は、U-23が無くともトップにいたでしょうから。西川くんに至ってはトップデビューの方が先となりました。

むしろ、今年はセレッソ大阪U-23にトップから選手を供給してもらったと言っても過言ではないぐらいに、セレッソ大阪U-23はメンバー構成にとてもとても苦しむこととなりました。

あまりにも歪だったメンバー構成

シーズンプレビューの記事でも触れていましたが、2019年のセレッソ大阪U-23はU-23枠内だけではスタメンを組めないほどに選手が抜けました。

特にDFラインは壊滅的で瀬古と舩木がトップに帯同し、大山が試合に出場できる状態ではなかったため、U-23枠内ではDFラインを本職とする選手は0人という状況でした。

結果、シーズン当初から大量のU-18の選手たちがU-23で出場することとなりました。
DFラインでは、西尾くんと林田くんのCB。そして下川くん、野村くん、吉馴くんが担ったSB。さらにポリバレントにCBからSB、CHまでこなした桃李くん。
彼らがいなければ、U-23は試合すらすることができない状況でした。

予想を裏切ってくれたU-18の選手たち

しかし、ここで良い意味で予想を裏切ってくれたのがこのU-18の選手たちでした。
シーズン開幕前に行われた練習試合では、関西学院大学を相手にボコボコにされたセレッソ大阪U-23(というよりほぼセレッソ大阪U-18)でしたが、開幕戦アスルクラロ沼津を相手に見事2-1で勝利を果たします。

試合後の大熊監督は「最後まで、選手たちが勝利を目指して諦めずに粘り強く戦ったというところは、私自身、感動しています。若い選手が、目一杯、ひたむきに90分間、頑張ってくれたなと思います。」とコメントを残されましたが、私も同様にとても感動させられました。
先週の練習試合で大学生相手にボコボコにされた選手たちが、公式戦たった1試合でここまで逞しく頼もしい選手になれるものなのか、と。

若い選手たちを大人相手の公式戦に出させてあげることができることはU-23最大の特権であるということを選手たちに改めて教えられました。

さらに快進撃は続き、第6節にはザスパクサツ群馬に逆転勝ち。J3参入100試合目の節目にJ3首位となる快挙も成し遂げました。

それでもやはり苦しい台所事情

U-18の選手たちの頑張りもあり、開幕をロケットスタートしたセレッソ大阪U-23でしたが、徐々に順位を落としていきました。
結果を出していた山根と山田のレンタル移籍もありましたが、一番の要因はこれまでU-23を支えてきたU-18の選手たちの離脱。

それまでも世代別代表の常連の選手はいましたが、U-23での出場も評価されてか世代別代表に選ばれるようになりました。

特にDFラインの選手たちは軒並みU-17・18日本代表に選出されました。これは他のクラブの二種年代の選手たちとは異なり、J3で大人たち、更には外国籍選手と闘い続けた高校生たちが評価された1つの表れだったのではないでしょうか?

セレッソの選手が日本代表に選ばれるという本来喜ばしい事柄も、セレッソ大阪U-23にとっては主力が4人も5人も引き抜かれるということになります。

結果、U-18でも補いきれないメンバー不足をトップの選手で穴埋めすることとなるセレッソ大阪U-23。
トップで出場機会の無い秋山は本来CHながら、CBで起用される羽目になりました。

そしてU-23枠内の選手も次々と本来のポジションではないポジションで起用されることに。CHの西本はCBに、SHの斧澤はSBに、FWの中島はCHに、と。

そうしてU-18抜きでなんとか選手をやりくりし、J3リーグをこなしていくセレッソ大阪U-23。夏場には大量失点&連敗も経験することとなりました。

J3規格外となった中島元彦

シーズン中盤以降、苦しむセレッソ大阪U-23の攻撃を牽引したのは間違いなく中島元彦でした。
北九州戦でのとんでもなくえげつない弾丸ミドルシュートを筆頭に、

決めるゴールが軒並みDAZN週間スーパーゴールに選ばれるというとんでもないことを成し遂げます。

U-23大阪ダービーでのアディショナルタイムでの逆転FK弾はセレッソ大阪U-23史上最高のゴールとなりました。

https://youtu.be/WDKig0-dqHk?t=318

シーズン終盤戦、すべてはU-18プレミア残留のために

2019年シーズンの終盤に入ると最も恐れていた事態に直面したセレッソ大阪。
それはセレッソ大阪U-18の高円宮杯プレミアリーグからの降格の危機。
昨年のFC東京U-18がプレミアリーグから降格したのに続き、セレッソ大阪U-18も降格の危機に直面しました。

U-18の主力選手がU-23に吸い上げられることにより、高校1・2年生がプレミアリーグでの出場機会を得ることとなったものの順位は下位をさ迷うことになるセレッソ大阪U-18。

いよいよ降格の可能性が現実味を帯はじめたとき、1つの選択が選ばれました。
それは、J3を戦ってきたU-18の選手たちのプレミアリーグ参戦。

月刊footballista (フットボリスタ) 2019年 10月号 [雑誌]

フットボリスタでの大熊監督のインタビュー記事内では、U-18を勝たせるためにJ3に出ているU-18の選手を使うことはないと答えてはいましたが、降格危機という現実が差し迫ったこの状況下において、背に腹は変えられるぬということだったのでしょう。

そのため、シーズン最終盤にはU-23はトップから選手の供給を受けてリーグ戦に望むこととなりました。トップに選手を供給することを最大の目的としているはずのU-23がトップから選手の供給を受けること自体は、望ましい状況とは言えないものでした。

ちなみに、2018年と2019年の選手出場記録を比較してみると、

2018年
U-18:8人 延べ84試合5,768分出場
U-23:17人 延べ349試合25,283分
OA:6人 延べ8試合616分出場

2019年
U-18:12人 延べ156試合10,783分出場(特別指定の西川くんを含む)
U-23:13人 延べ255試合18,409分出場
OA:8人 延べ55試合4,457分出場
※データはSoccer D.B.より

U-18の選手たちの出場時間は倍近くに、OA枠の選手の出場時間に至っては7倍近くに跳ね上がりました。(OA枠の出場時間については、トップで出場機会を失った澤上が半分近くを占めてはいますが)

閑話休題。
U-18のプレミア残留のために、トップとU-23が動くという状況となりはしましたが、幸いにセレッソ大阪U-18は最終的になんとかギリギリのところでプレミアリーグ残留を果たすことができました。

U-18の最終節も観戦に行きましたが、キャプテンマークを巻いた奥村くんの試合後の最後の挨拶を聞いていると、U-18とU-23を選手が行き来することのチームマネジメントの難しさを感じさせられました。

U-23チームのジレンマ

今年ほど、U-23というチームの存在に悩まされたシーズンはなかったでしょう。

J3で良い成績を残したけれども、トップに選手を供給することはできなかった矛盾。
そして『U-23』が持つジレンマ、それはU-23はJ3という公式戦を戦えると同時に毎週公式戦を戦わないといけないというジレンマです。

語弊を恐れずに言えば、J3の環境は19歳以上の選手にとって強度は落ちると感じます。
それが故に、できればいち早くJ2以上のクラブへレンタル移籍させたい。現に今年のセレッソは、U-23枠内で9人もの選手たちを貸し出しました。

が、選手を外に出せば当然、手元にいる選手は少なくなります。
手元の選手が枯渇した結果、U-23が毎週の公式戦をこなすためにはトップやJ2他クラブにU-23枠内の選手を供給している場合ではないという本末転倒な状況に。
能力的にJ3規格外となっている選手がいるにも関わらず、J3の公式戦をこなすために選手をU-23に縛り続けるしかない環境が発生してしまいました。

もちろん、U-23枠内の保有選手を増やせば解決する問題ではあります。しかし、U-23が来年には終わると報じられている中で、選手保有数を増やすことは現実的に難しいところがあるでしょう。

まとめ

2019年シーズンは、
J3という公式戦で若手に試合経験を積ますことができる環境のありがたさ。
J3で経験を積みながら、選手がJ3規格外となった際に上位カテゴリーへ選手を供給することができるだけのメンバー編成の大切さ。
U-18の天井を引き上げつつ、U-18自体のチーム運営に支障をきたさないようにする匙加減の難しさ。
これらを改めて感じさせられ考えさせられる1年となりました。

報道通りであれば来年はセレッソ大阪U-23としてJ3に参入することができる最終年となります。
J3で経験を積むラストチャンス。
才能を開花させる選手がどれほど出てくるのか、シーズンが終わったばかりだというのに、来年のセレッソ大阪U-23の開幕戦が待ち遠しい今日この頃でした。。

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