見出し画像

わたしの戦場

居候している祖母の家は高台にあって夜には驚くほどの夜景。住むまで知らなかった。なんて贅沢で呑気な暮らし、けれどやはり日々の小さな決定に他人の存在が混じることは久しぶりすぎて早くもめげそうだ。自分の決定ばかり迫られる一人暮らしにめげてへこたれてこれを望んだのではなかったか。結局何においても文句を垂れてばかりの、どこまでも狭量で余裕のない自分がいやになる。泣いてばかりいたら頭が痛くて眠くて、それでもホームグラウンドの生ぬるさはわたしをじわじわと癒していく。やっとすこしばかり立ち上がることができそうだ。何にやられてこんなに参っていたんだろう?今ではもうわからないそのダメージは過ぎてしまえば確かにそこにあったものとしてわたしの体から抜けていこうとしていくのを今になってやっと感じる。もっと元気になりたい。もっと健康になりたい。もっと美しくなりたい。欲は尽きないが欲さえ出ないどん底よりなんと健全なことだろう。

秋の文学フリマに向けてウォーミングアップも兼ねて頭の中の物語をぐにゃぐにゃと綴りはじめた。うまくかけたらいい。不思議と繋がりそうなものがいい。暗い夜の話。だけど呑気そうな話。いつもながら物語は紡ぐはしからわたしの知らないことばかりで、一番楽しんで続きを繰っているのはわたしなのだろうと苦笑する。しかしわたしはそういうものが好きだよ。作り手が誰より楽しんで作ったもの。ヒラコー先生の言うところの、頑固な店主が誰の言うことも聞かずに作る濃〜〜〜いラーメンみたいなもの。わたしもせめて自分の美意識に敵うラーメンを。そうそう、そういう職人的なお店として、学芸大学にある「ポポット」というクレープリーはまるで夢のように美味しいです。特にお紅茶の芳香が素晴らしい。近いうち行きたいな。ホームグラウンドたる東京には大好きなお店も大切な人もたくさんいて、ちっとも捨てられやしなかった弱いわたしだけどもう少しここで戦っていくからね。そんなあやふやな存在をあやふやな人たちの群れに包んですこし安心させてくれる街でもあるのだよ、トーキョー。


#東京 #日記 #エッセイ #女の一生 #東京考

本を買います。たまにおいしいものも食べます。