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シアスター・ゲイツ展『アフロ民藝』

シアスター・ゲイツ展『アフロ民藝』に行った。想像以上に良い体験だったので感想を書き留めたくなった。

プロローグ

最初に展示されているのはゲイツではなく19世紀の木製彫刻。木喰上人という僧が全国を廻りながら作った仏像なのだそうで、民藝運動の提唱者である柳宗悦に発見されたものだという。彫刻そのものが持つ自然性、そこに美を見出し西欧文化への抵抗としての側面の民藝運動。この辺りがアフロ民藝の民藝部分なのかなと思った。

対角に配置されていたのはゲイツの作品。キャプションを撮っていないので記憶が曖昧だが、黒人が多く従事していた屋根工事に使われていたタールを使った作品。実際にゲイツの父もその仕事をしており、他にも同じようにタールを利用した作品が展示されていた。アフロ民藝のアフロの部分が提示されている。

正直見た目的には色味くらいしか共通点を見い出せなかったが、アフロ民藝の言葉の通り、今回の展示はこの両者の文化、哲学を融合せんとするもののその出発点なのだと理解した。たしかにこの2つが並ぶことは中々ないだろうからそこを繋ぐときの力線のようなものは言葉を並べるだけでは作りづらく、ここにアートを介在させる意味があるのかなと想像した。知らんけど。

神聖な空間

次はレンガが敷き詰められた床で出来ている大きなフロア。常滑市で作られたレンガの床の上に日本、アフリカ系アメリカ人の作品が並べられている。前の空間で置かれてい民藝とアフロがゆるく繋がるようなイメージ。音声ガイドでゲイツの言葉にある「ある空間に溶け込んだ複数の作品」というのがしっくりくる。先程の2作品の対置よりも、レンガの床という土台に作品があることで空間的にまとまっている感覚を覚えた。これも色彩的な統一感によるものが大きいのかもしれないけど。

ブラック・ライブラリー&ブラック・スペース

でかい本棚。あとはシアスター・ゲイツが行った活動をまとめている年表がある空間。ここでシアスター・ゲイツ自身について知ることができる。前の空間にあった作品もそうだけどアフリカ系アメリカの作品は全てその背景に黒人差別の歴史があるんだなと。

ブラック・ベッセル(黒い器)

単体の作品としては一番好きなものだった。特にお気に入りなのは下部がずんぐりしてるやつ。土偶ぽさが感じられて惹かれた。土偶のフォルムが好きなんだろうな。

自分の中での民藝作品のイメージカラーは茶色。派手な彩色のない陶器や木製の器や籠からの想起。対して黒人作品のイメージカラーはそのまま黒色。日本の文脈をもった陶芸作品が黒色になることでブラック性?みたいなものを帯びて、そこに各文化の共通項が顕在化するような感じか?
まぁ陶芸とか詳しくないから勝手に感じ取ってるだけだけど。

年表の部屋

常滑、民藝、黒人、ゲイツ本人、架空の陶芸家の年表が並べられている。正直文字多すぎて読みきれなかったけど、通常並べられることはないだろう視点での歴史が並べられることでゲイツ自身の形成のルーツが可視化される。

たぶん自分を形作ってきたモノゴトの年表を作ってみたら全然違うものになるんだろう。住んでいた土地の歴史と触れてきたサブカルチャーや所属している会社の年表とかになるのかな。もし自分が何か作品を作るのだとしたらその背景になるものは展示のものとは全然違うものなんだろうなと。少なくとも自分の中に黒人の解放運動の文脈はない。だからこそシアスター・ゲイツの作品はシアスター・ゲイツ個人から内発するものなんだろうなという感覚。

あと最後に突然横たわられていた陶器で出来た人間の像はちょっと笑った。なにあれ。陶芸の擬人化?黒人と陶芸の融合体?と気になって作者調べてみたら普段は普通に綺麗な器作ってる

作者本人のインスタで解説を読むと前衛陶芸という器の機能を果たしていない陶芸に対する抵抗としてのものであり、あくまで食品を載せる器なのだという。これも民藝につながる作品なのかなと思った。何も書いてなかったらわからんて。

アフロ民藝

メインイベントというかメインステージというか。もともと何となく何があるかは知っていたので部屋に入る前から漏れてる音楽でテンション上がった。

日本の民藝文化とアフリカ系アメリカ人の文化が混じり合った文化様式があったとしたらのIFの空間。でも、今までの展示があったからかその空間に違和感はなく、魅力的に感じられた。特にバーカウンターに並べられている貧乏徳利はその空間をアフロ民藝たらしめている要素に思えた。

おわり

ちょっと前に見た和フリカ展もアフリカに関するアート作品だったので似ているところがあるかと思っていたが、アフリカ人とアフリカ系アメリカ人の違いか、全然違うものに感じられた。

あちらはもっと精神性みたいなものに焦点を当てていたように思える。こっちは歴史とか文脈とかそういうものを掬い上げているような気がする。

自分の中にアフロ民藝のイメージ空間みたいなものが出来上がっている。またこの空間に行きたいと思ったし、別の形でアフロ民藝文化に触れたいと思った。

あと民藝については一冊くらい本読もうかなと思った。良きタイミンクで。

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